ひろぽん

ジョゼと虎と魚たちのひろぽんのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)
3.9
大阪の大学で海洋生物学を学ぶ鈴川恒夫は、メキシコへの留学資金を貯めるべく、アルバイトに明け暮れる日々を送っていた。ある日、彼は坂道で車椅子の少女・ジョゼを偶然助ける。そして、彼女の祖母から、アルバイトとしてジョゼの世話係をしないかと持ち掛けられ、それを引き受ける。恒夫とジョゼは互いに反発しながらも、少しずつ心を通わせていく純愛ラブストーリー。


原作も実写も未視聴。

鮮やかで美しいアニメーションの世界観や、可愛いキャラデザに引き付けられ魅力される。描写の一つ一つが本当に美しく、ジョゼの描いた絵画のコレクションはとてもリアル。

メキシコに留学するためバイトに明け暮れる男子大学生の恒夫と、脚が不自由で性格がひねくれている車椅子の女性・ジョゼの純愛がとても素敵。恒夫が22歳で、ジョゼが24歳という年上女性との恋愛という年齢設定も好き。

坂道で暴走する車椅子を体を張って止めた恒夫に対して、文句を言って罵倒するジョゼとの最悪の出会いから、徐々に関係性が変化し心の距離を縮めていく流れが良かった。

ジョゼと恒夫が祖母に内緒で外出してカップルのようにスイーツを食べたり、映画を観たり、車椅子を逆走させてみたりと、ジョゼが知らない外の世界を満喫してる時の充実感がたまらなくキュンキュンする。

精神的にワガママで幼かったジョゼが、恒夫と出会って徐々に自立していく姿には心打たれた。特に、髪をいつもと違う髪型にしてイメチェンをはかり、玄関の所で祖母に外の世界の希望を語るシーンが良くて心にグッときた。

登場人物は皆良いひとばかりで、恒夫の親友の隼人、バイト先の後輩の舞、図書館勤務の花菜と、優しい周囲の人達に恵まれている。その中でも、ジョゼの祖母であるチヅの孫思いなキャラが個人的には好きだった。

恋に破れた舞が悪役をかって出て、ジョゼにハッパかけたシーンはとても切ない…。いつも恋が叶わない人を応援したくなるタチなんだよな〜。

恒夫が事故で怪我をして絶望している時にジョゼが制作した絵本「にんぎょとかがやきのつばさ」の読み聞かせが心に染みた。安易な言葉を送るのではなく、絵本でメッセージを伝えるというのがまた良き。

今作はジョゼの性格の悪さを受け入れられるかでこの作品を楽しめるかどうかが決まると思う。両親を亡くし家から外出せず祖母と2人閉鎖空間で寂しく育ったからひねくれてしまったのだろうな。ラストも待ち合わせをすっぽかし、退院したばかりの恒夫に探し回らせた時の心境がイマイチ分からなかった。話が進むにつれ成長したのかと思ったけど、その行動をみると根本的には何ら変わっていないのかもしれない。

途中までは良かったのだけれど、終盤になってから少し覚めてしまった。ジョゼの一人称が“アタイ”なのも違和感がある。

映像は最後まで美しくて好きだった。

主演2人の声を担当している中川大志と清原果耶が上手くて全然違和感がなく素晴らしかった。大阪が舞台ということで、大阪出身の清原果耶を抜擢してたのが良かったし、彼女のナチュラルな関西弁が心地よかった。

身体障害者の生きにくさのようなものを感じれた気がする。外の世界を知らなかったジョゼから見える世界は、とても刺激的で絵よりも美しくキラキラした世界に映っているんだろうな。海水がしょっぱいとはしゃぐジョゼの姿が忘れられない。本当に素敵な作品。
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