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パラサイト・イヴの消費者のネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト・イヴ(1996年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

・あらすじ
大学で病気の治療を目的としてミトコンドリアの研究を行なってきた男性、永島利明
彼の妻、聖美は2人の初めての結婚記念日に車を運転中、朦朧としてトラックに追突、荷台の鉄骨がフロントガラスを貫き、頭を強打してしまう
大量出血と共に自発呼吸が出来なくなった彼女はやがて脳死状態に…
そして聖美の死を受け入れられない利明の元に1人の女性が現れる
彼女の名は小田切悦子、移植コーディネーターの女性だった
聖美が生前に腎臓のドナー登録をしていた事を小田切は告げ、提供を求めるが利明は拒否
だが後に移植対象の患者である少女、麻理子の担当医である吉住も直談判しにやって来た事で一つの条件と引き換えに利明は承諾する事に
その条件とは腎臓を提供する代わりに肝臓を自分にくれ、という物
不審に思いつつも吉住は受け入れ、無事に麻理子の手術も成功したかに見えた
しかし麻理子の体には徐々に奇妙な変化が起こっていく…
その頃、聖美の肝臓を受け取った利明はそれを元に細胞を培養していた
理由は聖美を甦らせる為
その行動が利明も予想だにしなかった結果をもたらしてしまう…
という小説家、瀬名秀明のデビュー作で名作映画「黒い家」の原作と同様に日本ホラー小説大賞を受賞したSFサスペンスホラー作品

・感想
かなり昔にちらっとだけテレビで観た事があった作品でずっと気になっていてやっとの鑑賞
人間と共生しながらも独自の細胞を持ってきたミトコンドリアが10億年の時を経て宿主である人間を操り、細胞を培養させて世界を支配下に置こうと動き出すという発想自体はかなり面白いし、Eve1として聖美が復活を遂げるまでも長いけどダレずに展開していて惹き込まれた
それだけにEve1となった聖美のビジュアルや彼女が人を襲うのに使うのが発火能力だけだったりという点が少し残念だった
ビジュアルは謎に乳首が無かったのが表現規制か何か?という感じでストーリーへの没入を若干阻害していたし、攻撃に関しても発火だけでなく細胞が侵食して体が不気味に破壊される様な描写があったらよりホラー然としていたんじゃないかなぁ、と…

それでも世界観自体がかなり面白く、人間のルーツであるアフリカで生まれた女性、ミトコンドリア・イヴの細胞を新たな生命体として確立させる為に腎臓移植を通じて麻理子の子宮を変形させて母体として利用する、という過程も良い
そういう入り組んだ展開のさせ方が日本ならでは、という感じ
これがアメリカ作品だったら「スピーシーズ」みたいに安直に異形化させてたんじゃないかな…w
その過程を踏む為に聖美として蘇ったEve1が利明を誘惑し、セックスして精子を採取していたり、そもそも利明との出会いや恋もまたEve1の元となったミトコンドリアが聖美を操作した事による物、というのも高度な脅威として魅力的だった

ただだからこそ、ミトコンドリアが利明に接触する以前に大学に入学してきた聖美を彼は目にして惚れていた事を明かし、僅かに残った聖美の意識によってEve1の力で両腕が燃える利明を受け入れて抱きしめられて2人が共に焼死する、というロマンス優先のラストには物足りなさがあった
それまでにせめてもっと多くの人間がEve1の手で殺されていればその結末でも悪くなかったんだけどね…
しかもどうやら原作の結末は違うとか…
どう違うのかは分からないけど内容によっては原作の方が面白いのかもなぁ

ストーリー以外の優れた点としては緑を基調とした映像の配色が不気味且つ美しかった事や吉住を演じる別所哲也の台詞の噛みが敢えて残されていた事で現実感が増していた点
後者は1度だけだし細かい事ではあるけど変に台詞が流暢過ぎるのはかえってフィクション感を強調してしまう、と個人的には思っているので素晴らしい事だと思う

ホラーとして見ると物足りなさも目立つけど設定や話が面白いので総合的に見れば良作という感じ
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