アギゴン

ひとくずのアギゴンのネタバレレビュー・内容・結末

ひとくず(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

朝イチで見る作品ではなかった…
この作品は予告で凄く気になってました。やっと近場のミニシアターで上映されるとあって見に行きました。

薄暗いアパート、ゴミだらけの部屋の中、何日も満足な食事を取れず、舐め尽くしたジャムの空き瓶、舐め尽くした調味料の数々。歯磨き粉さえ舐め尽くしていた。ガスも電気も切れて水道しか使えないなか、幼い女の子鞠は薄汚れた服のまま毛布にくるまって孤独に耐えていた。ドアは外から鍵がかけられ監禁状態。
そこへベランダの窓を壊し入ってきたのは空き巣を稼業としていた
カネマサだった。
突然の侵入に怯え、ドアに向かい、開けようと必死になる鞠の姿に、カネマサは遠い過去の自分を見ていた。
部屋の状況から全てを理解したカネマサは、不審がる鞠にぶっきらぼうな態度で鞠のために食べ物を調達し与えた。
そしてドアをケチ破り外へと飛び出す。女友達に頼み鞠の服を買い、
銭湯へ連れていく。そこで女友達に聞かされたのは、鞠の身体中に付けられた無数のアザと胸にはアイロンの火傷跡…そして小さな手の甲にはタバコで付けられた火傷跡…カネマサの内に忘れかけていた激しい怒りが怒涛のように体中を駆け巡った。

あらすじをこれ以上語ってしまうと、ネタバレになってしまいそうなので、ここまでにしておきます。

この作品は幼児虐待の激しい様子を描写するシーンが何度もありました。(直接的ではないけれど)
ほんと耳塞ぎたくなるほどでした。
カネマサは決して善人で褒められた人間ではないけど、少なくとも鞠には救世主だったと思います。
この作品を観ていると、幼少期に受けた悲惨な体験は、その後の人生に大きく影響してしまうと言う事をはっきりとぶつけられたような気がしました。
そして「母親」と言う存在は子供にとってかけがえのないものなのだと感じました。どんなに酷い目に合わされても、自分を置いて男に走った母親だとしても、鞠はずっと母親を気にかけている…🥲
健気で泣けてきました。
またその母親も愛されずに育ってきた過去を引きずったまま、鞠を産んで、愛し方がわからない…

カネマサも壮絶な虐待にあいながらも、母親の事を気にしていた少年時代。
「アイス食べな」母親の男から瀕死の状態になるまで殴られたカネマサに母が持ってきたアイスを食べるシーンはほんとに辛い思いでした。せめてもの償いだったんだろうか😔

欠けた歯車をガタガタと回しているようなカネマサの人生。
まともな生き方じゃないけど、鞠の笑顔の為にカネマサは必死に守り始めます。
鞠の母親と激しくぶつかり合いながらも、それは辛かった過去を背負った魂同士の叫びにも感じました。ほんとにやることはダメな事ばかりなんだけど、人クズは人クズでしか成敗出来ない事があるのかと思わされる作品でした。

鞠の誕生日にカネマサがケーキを買いにケーキ屋へ行くもバースデーケーキが売り切れていて、激怒している中、パティシエの女性が優しく対応しケーキを用意してくれるシーンで、ちゃんと対応してくれた女性にカネマサは大人しくなり安心した顔になった時、この人はどれだけ粗末に扱われて来たのだろうかと、思ってしまいました。そしてこのラスト近くなってからの展開は本当に泣けてきました。またこの時に流れた歌で、余計に悲しみを掻き立てられました。🥲

暴力シーンや虐待描写が辛すぎて、もう一本映画を見る予定でしたが、この作品が私の頭の中を占拠してしまい、これ1本でおしまいです。_( :⁍ 」 )_グッタリ
「子宮に沈める」もかなりのショッキングでしたが、こちらはラストに希望が見えて来たのに救われました
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