空海花

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の空海花のレビュー・感想・評価

4.0
東大全共闘1000人vs三島由紀夫
割と文学少女(もちろん過去です笑)×三島好きなので楽しみにしてました。
左翼対右翼という構図も、今もあるでしょうが
昔に比べると形骸化していて馴染みがないですよね。まぁあった頃を私もリアルには生きていないですが。

これは想像以上に良かった。
見たことのない貴重な映像を見るくらいのつもりがすっかり魅せられた。
三島由紀夫は当時相当な人気者だったんだとあらためて感じた。
映画スター抑えてトップだったのか。
三船も世界の三船だが、三島も世界の冠詞がつくものね。

そしてかの討論会。
もう決死の覚悟と思いきや、一見和やかととれなくもない。
学生運動は過激なイメージしかなかったが
言葉対言葉。理性対理性。
理性は言い過ぎか。賢い人は感情を言葉にできる。三島は文学者だから当然とはいえ
これが東大生。
今でも東大生で番組作れるのだからやっぱりすごいのだろう。。

芥氏対三島が面白い。
私は大学が芸術系で現代美術系には馴染みがある。
だからあの「事物」の話の感じは懐かしくもある。
熱論を交わしたり、哲学書も頑張って読んだし
ただあんなテンポ良くなめらかに難しい言葉はまぁ出ない。
相手の話を理解するスピードも早い。
気持ちよさそう…
歌うまい人みたい。

同じ次元で会話をしているのか
相手に次元を合わせている風もある。
ある部分が決定的に異なるが
かなり共通している部分もあり
それが面白い。

「媒体として言葉が力を持った最後の時代」
と芥氏は言う。
そうかもしれない。
全共闘にはあまり良いイメージがなく
退廃的なもののように勝手に思っていたが
現代の方がよほど退廃的だ。
このすさまじい熱量は健全ささえ感じる。
熱量と敬意、知恵と健全。

三島はその後「象徴としての」天皇論に対して自決をする訳だが
私は新しいものは好きだけれど
歴史には敬意を払う主義なので
「象徴」に変わった理屈は謎すぎる。理由は知っていても、突拍子がなくて変テコだなぁとは思う。
討論の後のそこに思いを馳せてしまう。

理想としては、
みんな同じく平和なのがいいけれど、
なかなか続けていくのは難しいので、
違う立場同士で話し合いながら互いに歩み寄って
ないものを埋めていくのが建設的だし
保守とリベラルがあるのってそういうことだったんじゃないかと思うんだけれど。
今はどっちが正しい、を飛び越えて
そっちが悪い。いやそっちこそ悪い。
みたいな感じになってしまっている。


…というのを赤ちゃんに釘付けになりながら
考えられるという貴重体験。


現在の元楯の会メンバーのインタビューや
芥氏を始め全共闘の人達の今の言葉も聞けたし
満足の一本。
ただちょっとTVっぽさが出てしまっているのが残念。音楽も何だか当たり障りがない。

いつも思うがドキュメンタリーって評価が難しい。


2020劇場鑑賞64本目/65

だいぶ遅れてしまいました。
こんな世の中でスケジュールが変わってペースが乱れてしまったみたいです。
そのうち追いつきます。
空海花

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