オレオレ

ミナリのオレオレのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.0
思った以上に地味な映画だった。
アメリカの田舎へ来たアジア人移民一家の艱難辛苦なんだが、アーカンソーというガチ保守王国でのアジア人差別、当たりかハズレかわからない土地でのビジネス、世代や夫婦間での軋轢、どれもが薄い。
が、思ったほどピンボケにはならず、意外に好きだった。

アジア人が主人公なのでやっぱり、感情移入しやすい。舞台は80年代だけれど、20世紀前半にアメリカ西海岸にやってきた日系一世のことを想像してしまった。
身を立てるにはまず農業、ということでカリフォルニアでイチゴ農園などを大きくし、成功していたのに第二次大戦中に敵性外国人として収容キャンプに入れられた日系アメリカ人とか。
こういう肉体労働で身を立て家族を養ったから、自分の子供たちには同じ苦労をさせたくない、だから教育の大事さをうるさく言う移民一世たち(国籍問わず)。
おそらく、このデイビッドやアンという子供たちも医者や弁護士になるよう言われ、農園は継がないんだろうな、でもそれが親の誇りなんだろうな、と思わせられる。

祖母のスンジャを演じたユン・ヨジョンがアカデミー賞助演女優賞を取っているが、まあ、美味しい役どころだろうからさもありなん。
彼女もそうだが、お父さん役のS.ユァンも、お母さん役の女優さんも自然でよかったと思う。
お父さんは子供に一旗揚げたところを見せたい、一方のお母さんは、子供をよりよい環境で育てたい、とどちらも子供への愛情が源泉なのに目指す方向が違ってくるとことか、長男だから、一人っ子だから、と自分の親や家族への責任を感じている、感じなければならないアジア人の苦労とか。

イマイチ、農園の従業員ポール(W.パットン)をネジの緩んだガチクリスチャンにした意味が分からないが。ああいう人が一番、村のはずれに引っ越してきたアジア人移民を嫌ってそうだが、(笑)。
いやほんと、アーカンソーにいた身として、教会の人々もヒヨコ作業場の人々も、アジア人に慣れすぎちゃう?!と思ってしまった。悪意はないが、スーパーとかでめちゃくちゃジロジロ見られまくった身としては。

一歩進んで二歩下がる農園の運営、最後に事件が起こるんだが、そこからの大復活劇バーン!を描かないのは好き嫌い別れると思う。
え?ここで終わり?って思ったもん。
ただ、最後に大人になった(医者や弁護士になった)デイビッドやアンが出てきて、みたいな演出がなかったのでよかった。焼き殺されるオスのヒヨコや、意味ありげなヒヨコ工場の韓国人おばちゃん従業員とか、なんか回収されてなくない?的な伏線は置き去りだけれど。