ゆう

MINAMATAーミナマターのゆうのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
2.0
尊敬するカメラマンさんとデザイナーさんが観ていたので鑑賞。

1971年、NYに住むフォトジャーナリストのユージン・スミスは、過去の栄光にすがり酒に溺れる日々を送っていた。そんな折、日本のカメラマンとその通訳を務めるアイリーンが彼のスタジオを訪れる。アイリーンは日本の大企業チッソが工業排水を垂れ流した結果人々が病に倒れていると語り、ユージンに病気で苦しむ彼らの取材をしてほしいと訴える。ユージンは日本に行くことに決めるが…。

実在の写真家の話で、「真実に基づいた物語」とうたっていた同作。
水俣病は今も被害者がいる日本の公害病で、劇中のチッソも実在の企業。
そして写真家のユージンは、数々の作品に出演するジョニー・デップとくれば、これは子どもが観てもOKな映画と解釈できる。
もちろん映画だから、監督や脚本家、プロデューサーのバイアスがかかっているのは間違いないし、ユージンが故人である以上、史実に忠実に…なんてできないことだし求められてもいないのかもしれない。
ただ、鑑賞後に感じたことは、これはユージンの妻アイリーンのための映画なのでは?ということ。
最後のシーンに、それが集約されていた気がしてならない。

水俣病の娘を母親がお風呂にいれるシーン。彼は大怪我を負っているため、アイリーンに撮影の大部分を手伝ってもらって撮影にのぞむ。
過去、別の国では助産師の写真を撮るために何ヶ月も関係性を築き、被写体との距離を丁寧につめ、彼らの生活を尊重してきた写真家が、風呂場の脇に三脚を立て、入浴中の娘さんの脚を動かし、「いいぞ」とつぶやく。そしてシャッターも満足に押せないため、最後までアイリーンに頼りきる。

あまりにも、かな、と思う。

この作品が訴えたいのはそこじゃないのはわかる。でも、だったら実在の企業に今も勤める人やその家族、そして被害に苦しむ人たちのことにも思いを馳せるべき。
真実という言葉を冠したドキュメンタリー風作品にするのではなく。
お風呂の写真はあまりにも有名だが、ご家族の意向で封印されたはず。

…ということを考えると、もやもやはどうしても残りました。
それも含めて、観て良かったと思います。
ゆう

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