えいがうるふ

MINAMATAーミナマターのえいがうるふのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.7
想像どおりに重い話だったが映像表現は予想以上に美しかった。キャストも◎で文句なし。ジョニー・デップとビル・ナイが揃ってるだけでも既に私得なのだが、日本人の役者陣も演技に隙がない実力派揃い。中でも今作での白眉はシゲル役の青木柚だと思った。かなりびっくりした。
なおこの作品のロケ地はセルビアとモンテネグロで日本ではロケをしていないらしいが、在りし日の日本の情景描写としてほとんど違和感がないのも凄い。

ユージン・スミスのことは名前ぐらいしか認識していなかったが一気に親近感と尊敬の意を持った。偉業を成し遂げた人物というよりも信念に基づいて行動する偏屈なプロフェッショナルとして、その魅力的な人物像をも丁寧に描かれていたのが良かった。

「入浴する智子と母」の撮影シーンは、見る側の緊張感とは裏腹に哀しいほどの愛と慈しみに満ちていて、思わず息を飲むように見てしまった。そこで撮影された作品とユージンがLIFE社に送った実際の写真のどちらも素晴らしく美しく、写真という表現活動の持つ力を思い知らされる気がした。

制作の経緯には色々な裏事情があるようだが、ともあれこのテーマで完成度の高い作品がこうして世に出されることで、今なお世界各地で続く公害被害について広く認知され関心が高まることはとても意義深いことだと素直に思う。