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MOTHER マザーのnori8のレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
3.9
ポジティヴで天真爛漫…
そんなイメージが定着しつつあった
女優・長澤まさみが
明らかに殻を破って進化した。

時に氷のような、
時に娼婦のような
そして、時に悪魔のような
狂気の表情に取り憑かれる。

親族に金を無心しながら
“共依存”の息子と自堕落な
逃避行を続ける、母親・秋子。

17歳の少年が祖父母を殺害する
という衝撃の実話を基にした作品。

大森立嗣監督が言うように
起こした罪を問う作品ではなく
何がそこまで母子を追い詰めたのか?
“狂気のマザー”秋子とは何者なのか?
126分、ひたすらその心象に
光をあてて描ききっている。

息子に“殺害”を迫る
長回しの2人のシーンは
まさに、息が詰まる。

最後の最後まで母親を憎まず
添い遂げる息子の決心は
矛盾と詭弁に満ちている。

が…一方で、“母子”という
誰も立ち入ることのできない聖域の
闇と神々しさを思い知らされる。

「私の子だよ」
ラストシーン…
蒼白となった表情で訥々と語る
“マザー”長澤まさみのまなざしは、
狂気を超えたオーラをまとっていた。

心にこびりつき離れない作品。
今年の邦画No.1と、すでに言える。
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