認知症であるということだけでもしんどいのに、口が達者というのが厄介過ぎて、観ているだけでも辟易とした。記憶が混濁し誰が誰だか分からないのに、過去の感情だけは持ち続けていて、それを吐き出されるというのは･･･ウィリスの挑発にはのらないなんて決め事、私なら一瞬で吹き飛びそうだと思った。
ウィリスを保守的で不器用な性格と簡単にまとめあげるのは間違っている気がしたぐらい、差別発言に下品な言葉のオンパレードだった。自分の思い通りにならないことに苛立ち、考えを押し付け、傷付けることも時に暴力を振るうことさえするその言動全てが忌々しくて、本当に気分が悪かった。これが、ヴィゴ・モーテンセン監督自身の親子関係を反映した半自伝的なものであるというのだから、驚く。
父親の秘めた感情を知って感傷に浸ったところで、そんなの翌朝にはもう冷めていると私なら思うけれど、こうして映画にしているあたり、監督自身は父親との歩みに折り合いをつけたということかなと思った。
ただほんとにもうウィリスから発せられる言葉の全てが差別的で挑発的だから、全然ヒューマンドラマとして良いようには観られなかったな。後味も悪いし、これは結構しんどい映画だった。
#138_2021
