ゆめちん

サンドラの小さな家のゆめちんのレビュー・感想・評価

サンドラの小さな家(2020年製作の映画)
4.0
サンドラの小さな家
 
"Herself" という原題の通り、主人公サンドラが自分自身で立ち上がり、人生を築きあげていく物語。

2人の幼い娘を連れ、虐待夫のもとから逃げ出したサンドラ。しかし公営住宅は長い順番待ちで、ホテルでの仮住まい生活から抜け出せないでいた。そんなある日、サンドラは娘との会話から、小さな家を自分で建てるアイデアを思いつく。

冒頭、サンドラは子供たちと楽しい時間を過ごしていたが、夫が帰宅すると雰囲気は一変。夫はサンドラに "自業自得だ" と罵倒しながら、殴る蹴るの暴力を振るう。そのDVシーンは常軌を逸していて観ているのが辛く、嫌悪感しか抱かない。こんな父親に "親権" なんてあるのかと、やりきれない気持ちになる。
 
そんなサンドラが周囲の人々から差し伸べられる "優しさ" が本作の魅力。皆が集まって助け合い、結果として自分も助けられる "メハル" というアイルランドの精神に感動を覚える。
 
主人公を演じたアイルランド人のクレア・ダンが脚本も手掛けているからか、DV夫がなぜ暴力を振るう男に育ったかをそっと明かし、単なる悪人にはしていない。救い救われるという "メハル" の精神がここにも生きているのは少し考えすぎか。
 
ラストの展開は胸が締め付けられるが、"自分自身" を取り戻したサンドラの表情に、光り輝く希望が見える。どんな困難にも親子3人で乗り越えていけるだろう。
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