むっしゅたいやき

ベルリン・アレクサンダープラッツのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

4.5
フランツ、もう一つの「その後」。
ブルハン・クルバニ。
ファスビンダーによる13時間超えの巨編、『ベルリン、アレクサンダー広場』。
弱者への現代社会の冷酷さと過酷さ─、“一度沈んでしまった者への、社会からの救済の無さ”を綴った作品である。
本作は彼の名作へオマージュを捧げつつ、舞台を今世紀のベルリンへ、主人公を前科者から不法移民へと置き換えたリブート作品である。

本編は、エピローグを含め全5章、183分で構成される。
3時間超えの長尺作品とはなるが、元が元であるだけに、個人的にはよく纏めたものだと感心される。
改編された事で、ベルリン退去エピソードや転職失敗エピソードの省略も有り、また駆け足感が醸成された為、フランツやラインホルトの焦燥・苦悩が充分描き切れないと云うきらいは有る。
更に、プムスへのラインホルトの反逆も、稍唐突に感じられよう。
ラインホルト役のアルブレヒト・シュッへも怪演ではあるが、ゴッドフリート・ヨーン演ずるところの、あの吃音の禍々しさが消えたのも痛い。
併し全体的に平板で、何処かのっぺりとした印象を受けた『広場』に較べ、本作のテンポは格段に良くなっており、この長尺でも飽きずに鑑賞が出来た。

エピローグにてフランシスが服役し、出所したのは彼のテーゲル刑務所である。
『広場』でも約100年前、フランツ・ビーバーコップが刑期を務めたとされ、其の出所の際には街並みの変化に目を細めたあの刑務所であり、その様子は本作のフランシスへも受け継がれている。

希望を感じさせるラストも含め、善く前作を踏襲しつつ、現代的に纏めた作品である。
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