いの

水を抱く女のいののレビュー・感想・評価

水を抱く女(2020年製作の映画)
4.3
水の精霊:ウンディーネの物語。男に別れ話を切り出され悲嘆に暮れた直後、出会った潜水作業員の男と恋に落ちる。ギリシャ神話を現代に置き換え、ベルリンを舞台に描かれるダーク・ファンタジー。


オゾン監督「婚約者の恋人」のパウラ・ベーアがウンディーネを演じる。抑えた演技でかえって内面の強さを表現する。婚約者の恋人のときもそうだったけど、歩く場面が多くて、その歩き方ひとつでなんか伝わってくるものがある。博物館でガイドをしているウンディーネ。東西ベルリンそれぞれの町並みの、大きな模型を前にして、ベルリンという街の歴史の一端を紐解く、その語り口の説得力。


潜水作業員を演じたフランツ・ロゴフスキの、運命の人に出会ってしまった感や、どうしようもなく彼女に惹かれていく感じや、五感が研ぎ澄まされていくところ等々、素晴らしいと思う。


水を使用した場面がとても多い。水槽、池、湖、夜のプール。巨大ナマズ。そのどれもこれもが神秘的。多彩な表現は、まるで強力な引きの力が作用しているかのように、わたしたちを、深くて静謐な湖底へと、いざない続ける。




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*バッハの旋律?が美しい。そのなかで、心肺蘇生時に彼が口ずさむ♪Stayin' Alive♪がなんか可笑しい。この曲はBee Geesだったのか!心肺蘇生するとき(そんな機会に遭遇しない方が良いけど)、やってみようと思う。(このテンポがsehr gutだそうです!)


*「ベルリン」の語源は、スラブ語で「沼・沼地」だとか。これも、水にまつわるお話。
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