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DAU. ナターシャのShinMakitaのレビュー・感想・評価

DAU. ナターシャ(2020年製作の映画)
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1952年、ソビエト連邦の某所。ある物理研究施設の職員食堂に勤める中年ウェイトレス・ナターシャは、若い同僚アーリャと喧嘩しながら毎日忙しく働いている。ある日、施設にフランス人研究者リュックが赴任し、ソ連の学者たちと秘密実験を行うようになった。食堂に毎日昼飯を食べに来るリュックと親しくなったナターシャは、研究者仲間の打ち上げに呼ばれた夜、彼とベッドを共にしてしまう。そして後日、施設の国家保安局員に呼び出されたナターシャは、厳しい尋問を受けることに…


「DAU. ナターシャ」

以下、DAU. ネタバレーシャ。


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ただスクリーンを見つめているだけなら、恐ろしく退屈。食堂の日常を延々と見せられた挙句、ナターシャとアーリャの意味不明な口論があって、研究者たちの宴会がダラダラとあって、ナターシャとリュックのぎこちないセックスが服脱ぐとこから行為後の風呂まで仔細に描かれてるのを眺めてたら、もう睡魔の虜ですよ。未編集のドキュメンタリーフィルムのような脈絡のない映像にイライラすること必至です。

というわけで、この作品は観る前に予備知識を仕入れておく必要があるんですな。


詳しくは検索して調べて欲しいんだけど、これ、「DAU.プロジェクト」のごく一部に過ぎないんです。フルジャノフスキーというロシアの監督が、最初は物理学者ランダウ博士の伝記映画を作るつもりで50年代当時の巨大研究所施設を再現、のべ1万人の素人キャストを投入し、そのセットに2年間生活させたんです。服も生活様式も50年代の暮らしをするよう強制、そのサマを撮り続けるという壮大なプロジェクトなんですな。「ナターシャ」はその膨大なフッテージから一部を切り取っただけのものなんです。セット内で50年代ソ連人になるよう〈洗脳〉された人たちが出てくるわけだから、フィクションでありながらもリアリティーショーのような中身になるわけです。これを解った上で観ないと、「ナターシャ」の凄さは伝わらないですよね。冷戦下ソ連版のテラスハウスというか、はっきり言って非人道的人体実験である「DAU.」。鑑賞というより、覗き見に近い感覚に陥る、映画史上最も狂った作品です。評価不能!
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