聞こえるのは未来からの叙事詩とSOS
視えるのは巨大で奇妙な共産主義の夢の跡たち
聴こえるのは亡霊のうめきの様な暗鬱な響き
感じるのは未来の宇宙と畏怖
2018年に逝去した音楽家ヨハン・ヨハンソンが最後に取り組んだ映画。O.ステープルドンのSF小説を元に20億年先の未来の人類からのメッセージをティルダ・スウィントンが語り、旧ユーゴスラビアのモニュメント「スポメニック」とともに届ける。
ヨハンソン氏がドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画の劇伴をよく担当していたことから気になり鑑賞。70分という短さが信じられないほど途方もなく永く果てしない時間に押し潰されそうになる感覚。自分がちっぽけに思えて何かが霧の中からうっすらと見えるたびにどうしようも無い畏怖の念に近い震えに襲われる。
第二次世界大戦の後に新たな社会主義のイデオロギーの象徴として建てられたスポメニックを舐める様な映像はその異形の巨大さをこれでもかと見せつける。何千年も前からあったようにも何万年も未来からやってきたようにも思える。
未来から「助けて欲しいのです」と言われても、この様な宇宙と星々の広大さや人類のカルマの重み、加えて自らのちっぽけさを感じさせといて何を言ってるんだと。具体的にどうしろとは未来人は教えてくれなかった。人は死んだらどうなるのか〜みたいなことは誰しもが考えたことがあるとは思うけど、星が死んだら〜みたいなのはもう知らないですよ…。
ヨハンソン氏はこのメッセージを受け取って(小説を読んで)何を思ったのだろう…。そして何を思って映画として世界に伝えるに至ったのだろう…。