真っ黒こげ太郎

キャンディマンの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

キャンディマン(2021年製作の映画)
3.7
現代に語り継ぐ、忌まわしき都市伝説――――。

何故、ここまで語り継がれているのか―――。




シカゴに引っ越してきたアーティストのアンソニー・マッコイが興味を惹かれた、とある都市伝説。
それはアンソニーの彼女の弟が語る、ある女殺人鬼の伝説。

大学院生のヘレンはかつてこの場所にあったカブリニ・グリーン公営住宅の都市伝説を調べていたが、突如カギ爪を使い大殺戮を繰り広げ、赤子を攫ったという。
最終的には赤子もろとも火の海へ飛び込もうとするが、住民に赤子を救出され、彼女一人が火の海に飛び込み焼死したという。

事件に興味を持ったアンソニーは調査の中で、鏡の前でその名を5回唱えると現れるカギ爪殺人鬼”キャンディマン”の伝説を聞く。
アンソニーはさっそくキャンディマンを題材とした新作を作り、展覧会に展示する。

しかし、展示してある情報からキャンディマンの事を知り、鏡の前で5回名前を唱えてしまった人々が犠牲になってゆく事件が発生!!!
更にアンソニーもハチに刺された腕が段々ヤバくなっていったり、自身がキャンディマンの姿に見えたりしてどんどん狂ってゆき…。





都市伝説の殺人鬼を調べた事で、周囲で事件が起き、自身も狂ってゆくアーティストの悲劇を描いた、スラッシャー・ホラー。

1992年の隠れた傑作ホラー、「キャンディマン」の正当な続編。

今作では過去の事件が影絵の回想で触れられてますが、1992年版を見た方が鮮明に分かる所もあるので、なるべく1992年の前作に触れておいた方が良いです。
(後半の衝撃の真実も、過去のアレコレを見てから触れた方が衝撃デカいと思うし。)


という事で、前作の記憶が乾かない内に見に行ってきましたが、前作が予想以上に凄い快作だったので、正直そちらに比べると(私的には)やや落ちる感があります。
とは言え「こういうアプローチもありかな?」と思える様な、興味深い内容ではありました。


本作も「殺人鬼に深入りして破滅してゆく主人公」のお話で、そこら辺は前作同様なんですが、あちこちで細かい違いがありますね。
まず、キャンディマンの伝説が「かぎ爪の片手の浮浪者が公営住宅に出没し、最終的に警官にリンチされ殺される」という内容に変わっており「あれ?」となった。
前作の主人公が調べてた伝説内容と全く違うのですが…。

後、主人公がガタイの良い黒人のアーティストに変わり、自分の作品に関わった人が謎の変死を遂げて精神を病んだり、自分がキャンディマンに見えてしまったり、ハチに刺された腕が腐りだしたりと、違うベクトルで墜ちてゆく。
(ただ、前作のヒロイン程の不幸さはないが。)


そして後半、主人公の驚くべき秘密が明らかになるのだが、ここはオリジナル版を見てから挑んだ自分は「マジかよ!!!」純粋に驚かされました。
確かに、そうでもおかしくは無いハズなんだけどな、その発想はなかったわ…。
(因みにヘレンに関する真実が捻じ曲げられてる理由もここで分かります。)


更に、キャンディマンに関して更なる真実も明かされる。
キャンディマンの伝説が変わっていたのもツッコミ所ではなく、キチンとした理由があったのだ。
そしてその”概念”により、キャンディマンの完全な正体が描かれ、本作は幕を引く。
(エンドクレジットの影絵が凄く分かりやすい。)

ここら辺は正直、前作の神聖さや厳かさが好きだった自分にとっては少々ガッカリした。
とは言え、社会的な問題の提示に関しては「ブラック・クリスマス」なるゴミ映画(爆)よりはまだちゃんとしているので「こういう解釈もあるんだなぁ」と素直に受け止められましたね。


そんなこんなで、今作ならではの続編としての解釈は面白かったし、1992年版とは”同じオチ”ながら”真逆のスタンス”なのも興味深く見れたのですが、正直な所前作に比べると微妙に感じる個所もあったり。


まず、前作に比べると血みどろと哀愁が漂う世界観はかなり薄くなった感じだし、BGMも前作に比べて印象に残らない。
更に特殊メイクの見せ場が減った事で、血みどろや重々しさも少なくなってしもうた。
殺戮シーンや残酷描写を見せないのも前作同様だが、本作は血の量が減って、CGの血糊とかも使ってしまってる所為で前作以上にグロゴアに関しては物足りない。
最初のノド裂かれた女性や切断された腕にカギ爪を埋め込む場面とかは中々悪くなかったので、いっその事「チャイルド・プレイ」のリブートの如くグロゴアを見せてくれても良かったのでは。
(因みに腕切断は暗くして見せてくれない、そこら辺ぐらい色気(ってかスプラッター要素)出してもいいのに…)

後、本作は会話シーンが多く、少し長く感じてしまった。
もしかしたら日本語吹き替えで見れば印象は変わるのかもしれないが、基本的に会話パートはかったるい感じだったのが残念でした。

後、クライマックスは青の点滅がチカチカして眩しい!!!
かなり目に悪そうなので、見る際にはご注意!!!


こうして書くと結構ボロクソに言っちゃってますが、前作のストーリーを汲みながらも驚きの展開を用意したり、前作とは違った社会性のあるテーマを上手く絡めたりして、中々興味深く見れました。
上記の場面も、自分のホラー映画の好みとズレてるだけで、不快感を煽る演出や、ビックリさせるシーンもそれなりに頑張ってたし。
(実は本編見た後に考察サイト巡ってた時の方が面白かったりするwww)

正直、この内容は賛否両論あるかもしれませんね。
(特に1992年版のファンの反発はかなり大きそう)

まぁ、異色なホラー物としては楽しめると思うので、あんま期待せずに気楽に見に行ってください。