人間は身勝手な生き物だ。
それぞれのちょっとした身勝手が、他人または自分を傷つけたり、死に至らしめたり、または救ったりする。
この映画に出てくる人たちは、誰も悪くなくて、そして少し身勝手だ。
身勝手によって人は不幸になり、身勝手によって人は救われる。
ものの善悪は結果論にすぎない。
身勝手が不幸に向かえば悪だし、幸福に向かえば善である。
せいぜい結果を受け入れてやっていくしかないのだ。
人がアイコンのように描かれていないところが好きだ。『すばらしき世界』のアイコン感には疲れてしまったけど、『空白』は本質をついた作品だと感じた。
松坂桃李がとてもいい。
破天荒な男と対になる構造は『孤狼の血』に似ている。この役回りだと、破天荒側の演技が目立ちやすいけど、受け側はほんとうに大変だと思う。
責任感もやりがいも感じていないスーパーの店長に訪れた悲劇。なんのバイアスもかけずに観れたのは、松坂桃李がフラットに表情少なく演じてくれたからだと思う。