桃色

空白の桃色のレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
3.3
なんだろう…
聞きたい答えしか聞くつもりがないから真実は見つからない。
父親も報道もおばさん店員もみんなそう。
とても「〜ふり」という表面しか見えない映画だった。
そう…序盤まではずっと。

そもそも真実をみつけることが重要ではなく、2時間の中で主役2人の心の変化を描く映画なんでしょう。
でも、映画の2時間の前に広がる物語までの時間がイメージできなかった。
こんな父になる前にもっと人間にはハンドル修正ができる能力があると思ってるからかな。
娘という愛する対象を持っているならこんな人間にはならないという願望からくる違和感かもしれない。

その他の登場人物の人間像。
これも強烈なだけでリアルに思えないひとがたくさん。
その一番がスーパーのパートのおばちゃんの草加部さん。
まぁ、こういう私が!私が!の女性は実際にいるけど、こういう人は自分を「おばちゃん」なんて思ってない。
ましてや若き店長を誘惑するようなイケイケおばさんなら尚更!
そう、こういう人物を女性だったら登場させないだろうなぁ(西川美和さんを思い浮かべて…)

間違いなく父に知られるのが怖くて逃げたんだと思うけど、怒りの沸点にいる父は親として娘の気持ちを知るチャンスを自ら閉じてしまってたね。
報道も都合よく聞きたいコメントを引き出す。
被害者なのか加害者なのか、そもそも交通事故は必然ではなく偶然なのに社会は責任を誰かに押し付けたがる。
でも…これが我が日本? もう少し穏やかさと暖かさの心を持ってる人はいない?

そういう灰色の物語が娘の万引きの証拠を見つけたあたりから少しずつ別方向に舵が切られていく。
自分の勘違いを認ることが大きな転機になっていったね。
絵を描くことで娘に初めて向き合うことになった。
煙たがられても側にいる若い漁師の龍馬と父・添田との軽いジョークのような会話も挟まってきて
やっと暖色が混ざってきたんだよね。

吉田恵輔監督作品は「BLUE」が好き。
でも「犬猿」はこの映画と近い匂いがした。
衝撃的で重たいテーマなのは分かるけど、
「BLUE」にあった「ロマン」みたいな暖色がなくて辛い気分が続いてたから終わりに向けてはほっとしたところ。

最後、一年前の空の雲を絵心のない人が思い出して描けるかどうかはかなり怪しくても、
これがいい終わりを演出するポイント。
同じ海に向かい、同じ空を眺めた時間があったこと。
日常に繋がれるものがあったんだよ。

そして店長・青柳にも繰り返された過去の日常から光も灯るような終わり。
これも良かった。

最初のイライラ…1/3くらいでいいよ…

古田新太さん。
すごい熱演…

松坂桃李さん。
個人的にはこの役をさせたくなかったなぁ。
桃李さんの作品はクドカンさん脚本の「ゆとりですがなにか」がとても好き。
演技力のある素敵な彼にはもっと素敵なセリフを語らせたい。
桃色

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