ひでやん

街の灯のひでやんのレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
4.8
街の放浪者が盲目の花売り娘に恋をして目の治療のため奮闘するロマンティック・コメディ。

多くの映画がトーキーへと移行する中、チャップリンはサイレント映画のスタイルを崩さず、伴奏と効果音を入れたサウンド版を制作。

山高帽にちょび髭、手にステッキという
お決まりのスタイルとコミカルなパントマイムで笑いと感動の渦に巻き込む。

冒頭、記念碑の除幕式で放浪者の尻に剣が刺さる。本人にとっての悲劇が観客にとって喜劇となり、とことん楽しませてくれる。

街角で花売り娘と出会う放浪者。落ちた花を拾えない娘を見て盲目と知り、一目惚れする放浪者、偶然走り出した車の音で金持ちの紳士を想像する娘、そして最後は笑いで終わる。

短いワンシーンに、あらゆる要素を盛り込み、情感とユーモア、そしてほのかな哀愁を漂わせる。

笛のしゃっくり、石鹸の泡、燃える葉巻、巻き取る毛糸、どんな小道具も笑いに変えるチャップリン。

切なさの中に笑いを、笑いの中に悲しみを、悲しみの中にまた笑いを入れる。

自殺を止めたことがきっかけで友達になった大富豪。酔うと「わが友」と呼び、しらふになると「何者だ?」と別人になる。

暗闇で「夢の王子様」を想像する花売り娘は、光の世界で何を見るのか?

ボクシングの軽妙なステップで爆笑し、クライマックスで感動に包まれた。ラストシーンは映画史に残る名場面だ。

映画が制作されてから約90年後、この作品を観た自分が今、笑って感動しているなんて喜劇王チャップリンは凄い!


人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。
―チャールズ・チャップリン
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