keith中村

ザ・ビートルズ:Get Backのkeith中村のレビュー・感想・評価

ザ・ビートルズ:Get Back(2021年製作の映画)
5.0
 そろそろ配信開始だっけ? と思ってDisney+に行ってみたら、まさに今日からでした。
 今日から三夜連続なんですね。
 
 1970年の映画「レット・イット・ビー」の長尺版! しかも監督がピージャク!
 1970年版は、中二か中三の時、1982年か1983年に、深夜テレビで初めて観ました。
 ゲット・バック・セッションは私が生後半年の1969年1月ですね。
 
 私が小六の1980年12月にジョンがマーク・チャップマンに殺害される事件がありました。
 その時点までは自覚的・自発的にビートルズを聴いたことはなかったんだけれど、有名な曲(全曲有名だろうって話だけれど)は知ってたし、FAB4全員の名前も言えた。
 私だけじゃない。当時の小学生は多分みんなそんな感じだったんじゃないかな?
 解散から10年、しかも極東の国の子供にも、それくらい認知されてたのがビートルズ。
 イエス・キリスト以上ではないと思うけど、同じくらいは有名でしたよ。ね、ジョン?
 
 ジョン殺害の報道は日本では9日の夕方だったと思う。
 臨時ニュースだったのかな。これは鮮烈に記憶しているし、「何だかとんでもないことが起こった」と感じたのも覚えています。
 翌10日、小学校に行くと、クラスの担任だったF先生がこのニュースのことを結構時間をかけて話した。
 F先生は女性で、当時35歳だったかな。ジョンより5つ下なんで、まさにビートルズ直撃世代だったわけですね。
 先生、泣いてはなかったかな。昨夜は泣いたのかもしれないけれど。
 
 それからしばらくしてNHK-FMでビートルズの曲がガンガンかかるようになった。
 それらを全部エアチェック(←死語)した。これが小六の冬から中一の春にかけてのことかな。
 アルバムまるごと全部流してくれるんですよ。
 レコードを買う必要がない。有難かった。
 全部エアチェック(←だから、死語だってば)しましたよ。
 生のカセットテープはLPより遥かに安いけど、中学生には高価だった。それでも入手できる中ではいちばん廉価なTDKの「AD」に全部録音した。メタルテープはすでに発売されてたけど、たしか46分で1200円くらいだったんで、おいそれとは買えなかった。
 あ~、ごめんなさい。この段落、若い人には単語が全部意味不明ですね。
 
 NHK-FMが偉いのは、いわゆる公式盤13枚だけじゃなく、シルバー・ビートルズ時代の曲も流してくれたんだよね。
 あと、シェイ・スタジアムとか(当時は「シェア・スタジアム」って表記してた)、ハリウッドボウルも流してたはず。
 ジョンの遺作「ダブル・ファンタジー」も全曲オンエアされましたね。これもエアチェックした。
 ただ、2曲目にあるヨーコの曲が昭和の中学生には、あまりに刺激的過ぎたので、これを抜いたバージョンをダビングして作って、普段はそっちを聴いてた。その「キス・キス・キス」は、夜中にこっそりヘッドフォンで聴いてたもんです。
 えっと一応書いとくと、「これを抜いた」だからね! 「これで抜いた」じゃないよ!!(←実に不要かつ下ネタな断り書き)
 
 ともかく、そんな感じで、中学時代はほかの当時のリアルタイムな洋楽とあわせて、いや、それ以上にビートルズにドはまりしてた。
 歌詞カードがなかったので、繰り返し繰り返し聴いて、英和辞典で聴き取れた単語を調べて、自分で「歌詞ノート」も作った。中一の英語の最初の最初に"Yes, it is"を習うじゃないですか。これも、「あ! ビートルズの曲名だ!」みたいな感じ。
 文法もわからずに歌詞を必死に聞き取ったり歌ったりしていたのが幸いして、英語の授業のたびに、「あのフレーズはこういう意味だったのか」って理解できる。
 そんでもって、英語のテストでたとえば、「前置詞はinかonか」みたいに迷うときは、曲を思い出したら正解を書けた。
 だから、授業聞く以外の勉強はまったくしなかったんだけど、英語はずっと得意教科だったし、今でもありがたいことに英語には自信がある。
 私、人生で何度もアメリカ人やイギリス人に、「ナカムラの英語って、なんでそんなに達者なんだ?」って聞かれたことがあるんだけれど、そのたびに、"Learned from Movies and Rock'n'Roll"って答えてきた。その原点がビートルズなんですよね。
 ただ、ビートルズに馴れすぎたので、彼らのリバプール訛り(特にジョンだな)になじんじゃって、"love"が「ロヴ」、"nothing"が「ノッシン」みたいな発音になっちゃうのが抜けませんでした。
 
 で、ようやく話が冒頭に書いたのに繋がるんですが、中二か中三のときに、映画「レット・イット・ビー」がテレビで放映されたのです。
 この時は、テレビのある応接間(←昭和な死語)にラジカセ(←同じく)とカメラをもちこんで、部屋を真っ暗にして観ました。
 だって、当時まだ我が家にはビデオデッキがなかったんだよ!
 だから、ラジカセはテレビのイヤフォン出力からライン入力に接続して録音するため。
 部屋を真っ暗にしたのは、三脚に立てたカメラで画面を撮影するため。
 
 そうやって録音した「レット・イット・ビー」も、繰り返し聴きました。
 この映画、81分なんで、90分テープだと1巻に全部納まるんだよね(もちろん、折り返し地点のCMで急いでB面に返した)。
 フィルムはたしか36枚撮りで臨んだんだけれど、シャッタースピードの関係でブレブレのやつもあって、それでも10枚くらいは成功したので、透明の下敷き(←昭和死語)に入れて学校で使ってたなあ。
 
 今回もまた、50行以上書いてて、本作に全然言及してません。
 ごめんなさい。
 そろそろ書きます。
 
 とにもかくにも、「レット・イット・ビー」の長尺版なんです。
 しかも、明日もあさっても続きが観られることの嬉しさ。
 ゲット・バック・セッションで何が起こったかは流石に知ってるんだけれど、映像で見るなんてことができるとは思ってなかった。しかも、画質がかなり良い!
 「正規版で知ってる曲が、プロトタイプから次第に出来上がってくる」というのは、バージョン違いやブートレグをそれなりに持ってる私としては、そこまで目新しい感動ではない。(←これ、ことビートルズに関しては、コレクターは上には上がうじゃうじゃいるんで、自慢したら大怪我する分野だから、あくまで私は「それなり」クラスだと自覚してます)
 
 とはいえ、たとえば"Get Back"がAのコード(じゃねえわ! ポール、あれをベースでやってるから、ただただラの単音だけだわね!)をシャッフルで弾いてる状態から、見る見る「完成形」に近づくところ。歌詞も「最終形態」に滅茶苦茶近いものが鼻歌でできてるところは、マジ鳥肌でした。
 
 このセッションで没った曲が、後にそれぞれのソロアルバムに入るってのも、たとえばオリジナルの「レット・イット・ビー」でもポールが"Teddy Boy"歌ってるところがあるんで、解ってるつもりでしたが、ジョージの"All Things Must Pass"やポールの"Another Day"もそうだったのか! って、そこは結構びっくりしました。
 あと、ジョンの"Gimme Some Truth"もそうだったんだけど、それどころか、これは"One After 909"などと同じく、「デビュー前の曲をやろうよ」の中の曲であったことにビビった。いかにも"Imagine"時代のジョンに似つかわしい政治的な曲だと思ってたんだけど、10代で作ってたのかよ!
 
 ポールが歌ってる"Another Day"は、ジョンがその“Imagine"収録の"How Do You Sleep?"で皮肉ってることを考えるとちょっと笑えました。ジョン、この日は遅刻してたので、この時点ではまだ聴いてなかったのかな。
 
 「レット・イット・ビー」では、とにかくビートルズが空中分解していく様が強調されてたけど、本作では仲のいいところもたくさん撮影されてて、そこも嬉しかったですね。
 とはいえ、やはり「マジカル・ミステリー・ツアー」と、この企画は、ブライアン亡き後のポールの「焦り」が前面に出過ぎてて、ポールがすごくBossyでPushingになってるところは、見ててつらいです。
 
 しかし、だからこそポールの凄さも際立ってて、たった三週間(っていうか、この第一部ではまだ序盤の一週間ですよね?!)なのに、さっき書いた"Get Back"以外にも、"Let It Be"、"The Long And Winding Road"、"Golden Slumbers"なんかをひょいひょい生み出してて、ポール、マジ神! ポール、マジ怖い! なんちゅう天才なんでしょうね、この人。
 考えれば、この映画の時点からさらに現代にいたる50年間もずっと現役のソングライターなんで、当たり前と言えばそうかもしれないけれど、マジでポールの爪の垢くださいよ!
 
 あと、ヨーコさんに、伝説に語られてきた「ビートルズを解散に追い込んだファム・ファタール」感が希薄だったこともよい発見ですね。
 そこまで疎外されてないし、リンダとも仲良く話してる。
 我々が大嫌いな(かつ、今となっては一周回って「大好き」な)、ヨーコの「ヒエ~~! ホゲ~~~! ア~~~! ア゛~~~~!」なボーカルに、みんなが嬉々として付き合ってるところも、めっちゃ笑えたし、よかった!
 
 そういや、私も若い頃、バンドの練習に当時付き合っていた彼女を連れて行ってましたね。
 ごめんね! 付き合い始めたばかりで嬉しかったんだよ! 調子に乗ってたんだよ!
 そしたら、案の定、メンバーに「ジョンとヨーコかよ!」って突っ込まれました。
 私らの世代じゃ、その知識は基本的リテラシーだもんね。
 ただね、そいつもやがて彼女を連れてくるようになったんで、私だって、「ポールとリンダかよ!」って突っ込み返しましたわ。
 違いは、そっちは結婚したけど、我々は別れたってところ。
 
 ああ。思い入れが強すぎて(プラス呑み過ぎて)、もはや何を書いてるのか自分でもわかんなくなってきました!
 本作に話を戻すと、ロケ地に「サプラタのアンフィシアター激推し」してくる監督(だっけ?)も最高でしたね。
 だって、我々みんな、それが最終的にアップル社の"Roof Top Concert"に着地するって知ってるのに、彼だけアフリカ推しだもんね。
 あさってリリースの第三部では、"Roof Top Concert"がノーカットで観られるんでしょ?!
 そんなの、この三部作全部満点ですよ!

 ピージャク、ROTRに続いて三部作全部満点を2回も作っちゃったね~! ピージャク、あんたも凄すぎるよ!