よしまる

ザ・ビートルズ:Get Backのよしまるのレビュー・感想・評価

ザ・ビートルズ:Get Back(2021年製作の映画)
4.9
 今年から念願のDisney+に加入、まずコレと思って観てみたら想像を絶する濃密さに面食らってしまい、なかなか前に進まない。何度も巻き戻し、30分も観るとドッと疲れが出て、つい寄り道してワンダビジョ〜ンとかホークアイとか観てしまうw

 そんなこんなで2ヶ月くらいかけてようやく観終えようかというときに、フィル友'みぃ猫たん'から「ルーフトップコンサートをIMAXで上映するよ!」というタレ込みがww

 そんなわけで、あえて第3話のライブ演奏の直前で観るのを止めてから、IMAXへと行ってきた。だからこのレビューは3話の途中までの感想となりんす。

 7時間50分に及ぶ、悪名高きゲットバックセッションの全貌を明かすドキュメンタリー。およそ想像していたものとは全く違う、ボクたちの大好きなビートルズの連中が確かにそこに存在していた。

 皆んなが好き勝手に曲作りをやっていた、意見が全然合わなかった、敵意剥き出しでセッションした、こうした陰鬱な晩年のビートルズ像が180度変わる映像体験だった。

 想像を絶する過酷なプロジェクトがまず頑として存在している。わずか1ヶ月でほぼゼロの状態からアルバム1枚分の曲作り、レコーディングを仕上げてライブをしなくてはいけない、しかも撮影用スタジオという劣悪な環境での演奏。こんなところに閉じ込められて、カメラを回されて、仮にどんなに仲良くたって良いものを作れるわけがない。

 ポールが語っている通り、親父代わりのブライアンの死がこの状況を招いたことも確か。認めたくない気持ちがあるとはいえヨーコオノの存在も影響していないとは言い切れない。ポールの完璧主義や、すぐにいじけてしまうジョージら、性格が災いした面も認めざるを得ない。

 それでも、これまで想像していたような
辛く苦しい雰囲気とは違い、彼ら全員がただ純粋に良い楽曲を生み出したいという一つの目的に向かっていたことが嬉しすぎて泣くしかなかった。
 煮詰まるとついついおちゃらけて自身の過去のナンバーや、チャックベリー、ザ・バンド、ディランといったスタンダードを嬉々としてセッションしてしまうお茶目さには、本当に観ていて嬉し涙が溢れた。

 ボクのアイコンはローリングストーンズだけれどw、元々はビートルズが根っこにあり、周りのロックファンに白い目で見られても推しはポール。だからジョンがふざけるとポールはさぞ腹が立ってたんだろうなと思っていたのに、いやいや、全然一緒にふざけまくっとるやないか笑笑
 あの頃は髭もじゃですごい大人に見えたビートルズが、この時まだ20代後半。下手すりゃあ息子みたいな年齢だ。

 そんな歳なら大好きな彼女と一緒にいたいのも当たり前だし、溢れる才能を持て余し、大人たちに歯向かい、時にふざけ合い、ぶつかり合って当然だと、今だからわかるし、これを観たから感じる。

 ジョージが脱退しても全力で説得にあたり、スタジオに移る、特番をやめるという打開策を得てからは、まるで過去最高じゃないかと思うほどの驚異的なクリエイティビティを発揮して、かの数々の名曲を綴っていく。

 時計は巻き戻せないし歴史は動かない。しかしこのプロジェクトが無かったらビートルズはまた違う道を歩んだかもというIFがどうしても頭から出て行かない。

 揺るがない事実として存在するルーフトップコンサートなのに、本当にやれるのか、彼らはこの先どうなるのか、ドキドキが止まらないのは何だろう?これがジャクソン監督のなせる技なのか。まったく同じフィルムを使った「LET IT BE」と印象がまるで違うのは何なのか?

 たぶん、時間。50年という年月がきっと必要だったんだろう。
それほどに彼らのエモーションは強烈で壮絶なものだったに違いない。
 紛うことなき天才であると同時に、どこにでもいる20代の若者、泣きも笑いもするふつうの人間であったということが克明に描かれた、最高のドキュメントだった。
 5.0に出来なかったのは、配信オンリーという点で映画と言い切れないゆえ。

 続きはルーフトップコンサートのレビューでお会いしましょう。


 以下、細かいネタを書き出すと止まらないけれど、備忘録代わりなので読み飛ばしてください🙇‍♂️

 GET BACKに次々と歌詞を足していく風景、そうか移民問題を皮肉っていたのかと今さら気づく。楽器を持ち替えてもパートを交代しても神業級にハーモニーを奏でるジョンとポール。サムシングやオクトパスガーデンが生まれる瞬間を目撃する喜びたるや。
 4人が全員一度はドラムを叩いてる。ジョージやリンゴもピアノを弾いている。こんなに未完成な作曲過程を観る機会はビートルズじゃなくてもそうは無い。

 ジョンがエピフォンで弾く「第三の男」のカッコ良さ。タバコを弦の先っちょに刺すポール、こんなの初めて観た。ジョージによる盟友クラプトン解説、からのビリープレストン推しの伏線。リンゴがフーのキースムーンのドラムを真似るとは。

 ロングアンドワインディングロードを「そして2番、歌詞はまだ出来てない♪」という歌詞で歌うポール。レットイットビーのレコーディング中にはヨーコとリンダが談笑しているなどw

 ジョンが思った以上にアランクレインに傾倒していた。彼のピュアさが際立ったのも本作の特徴。

 ジョージがポールへ放つ一言。
「わかった、君の言う通りにすべて弾く。
でも君はわかっちゃいない。」
 そしてジョンはポールに
「(君は)提案を断る自由をくれ。いい提案は頂くから(と言う)。ポール様だからな。」

 ポール好きとしてはズキュンと胸に響く一幕。ポールも自分でそれはわかっている。みんなも相手をなじるのが目的ではなく、心から憎み合ってる節は感じられない。だからこそポールも解散に至る話になるとあからさまに目を潤ませて辛い顔をする。
 誰も悪くないのに、こうならざるを得なかった若者たちの葛藤を描いたドラマとして、現実はあまりに過酷で、出来過ぎだったのかもしれない。

 続く!