りな

護られなかった者たちへのりなのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
4.5
この作品はまずタイトルにとても惹かれて観てみようと思いました。東日本大震災と生活保護の実態を描いたヒューマンドラマ。
生きてちゃいけない人なんていない。そして、死んでいい人なんていない。この2つの言葉はこの映画でとても大切なメッセージだと思うし、倍賞美津子さんから佐藤健さんへそして清原伽耶さんへこのメッセージが伝えられるところは目頭が熱くなりました。
生活保護を受けることは国が与えてくれる権利なのに、国に迷惑をかけることは出来ないと、生活保護を受けるのは恥ずかしいと思ってしまう。この現状で今回のような事件が実際に起こり得るということにゾッとました。
また、震災という怪物を前にたくさんの人が亡くなったけど、誰を責めていいか分からなかった。しかし、生活保護の事件は責める事が出来る人間がいる。犯人が殺人を犯した理由を聞いてとても胸が苦しくて涙が止まりませんでした。
あとは瑛太さんの役は確かに言い方も嫌だったし、生活保護の辞退を勧めている感じがして悪のように感じたけど、震災後に全ての人を助けることは出来ないと口にするようになったという話を聞いて、セリフでも出てくるように、震災の時、あの時は皆んな疲れ切っていたというのはこの事件の大きな原因であったと私は感じました。だから一人で墓地を直したりするような瑛太さんの役を単純に責めることは私には出来ないな、なんて考えていました。
役者に関しては、今回は本当に清原果耶さんにやられました。モネを観ていても、果耶ちゃんの演技の魅力に引き込まれましたが、今回の役の特に怒りと悲しみを表す表情は今でも鮮明に思い出せるくらい強く、とても印象的でした。健さんがおっしゃっていた通り、確実に日本の役者を代表する存在になると思います。
護られなかった者たちへ。このタイトルの意味もちゃんと知る事ができ、本当に観てよかった作品でした。おかえりと言ってもらえる事がどれだけ幸せなことか。大切にしていきたい作品がまた一つ増えました。
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