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風船のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

風船(1956年製作の映画)
3.5
仙台短篇映画祭にて、岸野雄一さんによるティーチイン付き上映。ごく短い挨拶の後にまずは鑑賞、のち40分の解説という内容でした。

例によって作品情報を一切インプットすることなく臨みましたが、タイトルバックや画の質感や登場人物の会話から察するに「これはきっと50年代の作品」と当たりをつけて鑑賞。終映後に調べてみたら56年作とのことで、5年前に香川京子さんのトークショー付きで観た東京物語から3年後か〜と思ったらもろもろ腑に落ちた気がしました。

冒頭、葬儀の焼香シーンから始まるもんで「どんだけ禍々しい話なんだろ…?」と不安になるも、ほどなくしてキャバレーで歌うシャンソン歌手やコニャック片手に歓談する外国人たちが続々登場して一気に画が都会的かつ華やかになったのでまずはその振れ幅のデカさに驚きました。情が深くて線が細くて存在そのものが儚い新珠三千代は息を呑むほど美しかったし、見てくれも言動もフェアリーめいてる芦川いづみ&小悪魔的にしたたかで野心に満ちた北原三枝の対照的なスタイリングby森英恵は眼福そのもの。鼻持ちならない金持ちのドラ息子as三橋達也が清々しいほどクソ野郎だったのに対し、父親役の森雅之がほぼ全編穏やかな笑みを湛えるノーブルな紳士だったので「あの父さんのもとで何故こんなヘルい息子が育つのか…?」と混乱しました。当時としては長尺だという110分、美しいモノクロ映像に魅入られつつ本日のテーマである「音」に注意深く耳を傾けてたらあっという間だったな。

岸野さんによる解説は「声」「効果音」「音楽」からなる3つのレイヤーを意識するところから始まり、各シーンにおける具体的な効果を示しつつおさらいする実践的な内容。一昨年前に観た「ようこそ映画音響の世界へ」の更に一歩先へと進んだような手ごたえを感じました。おもしろかった〜!また参加したいです、こういうの。
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