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美と殺戮のすべてのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
3.5
あられもない写真のそこかしこからいずれ死に至るであろうその日暮らしのやさぐれた匂いが漂っているにもかかわらず、どういうわけか愛嬌や可愛げのようなものまで感じとれるのに面食らいました。それは、かつて血を分けた姉を失った彼女が自力で探してたどり着いた居場所や友人をまた失うわけにはいかないという意地のそのまた先にあるでっかい覚悟や愛みたいなものの成せる技だったりしたのかしら、というようなことをまとまらないまま考えながら観ていたように思います。

ピルケースや偽の処方箋を大量に撒き散らす抗議行動はそのロケーションもあいまって計算され尽くしたインスタレーションのように見えたし、多くの賛同者たちと地面に横たわる姿にはマイ・アイアン・ラングのMVを思い出しました。彼女の生い立ちや人となりについて語るのは彼女自身だけ、活動に関しては団体関係者の談話が大半を占めるのだけれど、METほか多くの美術館においてその訴えが実を結びつつある中で本作が撮られたのならば是非そちらの見解も聞いてみたいと思いました。芸術作品をつくる側と資金を提供する慈善家、その間に立つ施設関係者がさまざまな問題にどう折り合いをつけたのかめっちゃ気になる。
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