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ミツバチと私のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

ミツバチと私(2023年製作の映画)
3.5
予告編だけで主演のこの子の眼差しに心を射抜かれてしまい、もっといろんな表情が見たくなって劇場へと足を運びました。説明的な台詞や演出は皆無、主人公とその周囲の目線でもって束の間の夏のバカンスを見つめているような感覚に陥る臨場感、ミツバチの羽音や森を流れる川のせせらぎ、緊張をはらむ場面の手ブレなどでその時々の心情を丁寧に描き出していると感じました。

主人公は8歳にして既に子どもと呼ぶのが憚られるというか、性別への違和感でがんじがらめになってしまって身動きが取れなくなっている様子を思慮深く寡黙に演じていて、まだティーンとも呼べない幼さなら相応の屈託なさも見せて欲しかったしその振れ幅が問題の根深さを浮き彫りにするんじゃないかなーなんてことを思いました。あとは、想像以上に信仰や宗教との繋がりが描き込まれてたので、その辺もっと知識を得た上で臨めば理解が深まりそう。ごく断片的にしか明かされないママとおじいちゃんの関係は、観る者の深読みを促す余白としては大いに機能してたけど仮にあといくつかのエピソードが語られていれば物語にさらなる奥行きが増したのでは、とも思います。

それにしても、表情ひとつで目を釘づけにするこの存在感の空恐ろしさときたらもう…!リチャード・リンクレイターに10年がかりで成長を追ってほしいです。
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