しゃび

君が世界のはじまりのしゃびのレビュー・感想・評価

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)
1.8
印象的なシーンや音楽があるのになんかピンとこない。先に進むにつれてピンとこなさが縮まってくるかと思ったら、どんどん広がっていく。

これはなんだろうと考えながら観ていた。

ぼくはこの映画を不自然だと感じた。

田舎町の気だるく鬱屈した日常を描きながら、個々の登場人物が明確すぎる悩みとともに描かれていること。オフビート感を出しながら、感情の発露だけがアップビートであること。

自転車はエモーショナルな小道具だ。
なにしろ、フランソワトリュフォーは自転車と女だけで名作を撮った(『あこがれ』1957年)。
でも、この映画に出てくる自転車は滑稽で、松本穂香がぐるぐると回っても機械仕掛けのようにしか見えない。

例えば、街中で学生が酔っ払ってどんちゃん騒ぎをしていると冷ややかな気持ちになる。でも、ぼくも学生の中の1人だったら一緒にどんちゃん騒ぎをしているだろうとも思う。

要するにコンテクストが共有されているか否かの問題だ。キャンプファイヤーの外側と内側では、いつでも大きな温度差がある。

ぼくはこの映画を観ていて、常にキャンプファイヤーの外側に気分だった。


『街の上で』の演技がものすごく素敵だった中田青渚さん繋がりで観たのだけど、やっぱりとても良かった。彼女の演技は、キャンプファイヤーの外側からでも十分に楽しむことが出来る。
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