もっと早く観ればよかった。私はとても良いと思う。カオスに見えて、ちゃんとコントロールできているのも好き。
◇本編に触れます◇
序盤はアレクシアの人格が未知で、身体的にも痛いし、どーゆー話なのか読めないので、映像をただ見つめ、目を逸らすしかない。でも劇中で最初に殺害されるのが彼なのは想定内として、2番目は意外。受け入れるだろうと勝手に思い込んでいたことに気づき、ここで「おや？」と体勢を整えた。彼女の動機に俄然興味が湧く。
アドリアンになってからも、この凶行が続くんじゃないか、ヴァンサンの虐待が始まるんじゃないかとハラハラするが、何とか生活も落ち着き、しばし平和な日常を送る（？）。ということは、彼女は殺人鬼なんかではなく、アレクシアとしての日々の方が生きづらかったんだなって捉えた。あと、消火と人命救助の活動をしながら、きっと実家の顛末に思いを馳せたに違いない。ここも皮肉な描写や、あざとい伏線ではなく好感が持てる。
笑いと紙一重なのも良い。例えば、ヴァンサンに引き取られた翌日、頭を半分だけ剃られ、三角の鼻ギプスをテープで貼られ、見習いみたいな帽子をかぶらされ、「これで身なりが整った」って！職場で紹介って！思わず吹き出しちゃう。
終盤は裸のシーンも多いがエロとは別次元。はじめこそショッキングだが、何度も見せられるうちに、これって無防備な自身の姿をさらけ出すことなんだと感じるようになった。そしてマタニティブルー。しかも予期せぬ、或いは望まぬ未知の妊娠で、誰にも打ち明けられない。フィジカルもマインドも確実に変化していくのに一人で対処するしかない。もし自分なら…と考えると涙が出る。何も言わずに抱きしめてあげたくなる。
ヴァンサンもヴァンサンで、注射を頼むシーンで二人の距離感や信頼関係の変化を表現するのがお茶目。挙げ出したらキリがないけど、部下のライアンも良かったな。もしアレクシアが同世代の誰かを好きになるなら彼かもしれない。
とにかく、愛なんて簡単には語れないが、どんな人にも、どんな状況でも、自分が生きる拠り所や居場所は、必ずどこかにあるんだって思えた。
※私は重度の金属アレルギーなので、チタンには普段から思い入れがある。私の身体にもチタン入ってるしね。
