空海花

ザ・ファイブ・ブラッズの空海花のレビュー・感想・評価

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020年製作の映画)
4.4
先日、チャドウィック・ボーズマンの訃報を知りました。
若すぎるし、本当にこれからの人で、
病が発覚した後にブラックパンサーを演じたというのだから驚きでした。
何とも受け容れ難いことです。
どうか安らかに🙏そして永遠に。

今作はNetflix公開からしばらくして7月に観てました。
トレイラーを見て絶対劇場案件と思っていましたが
当分劇場公開予定がなく、ずっと楽しみにしていたので我慢できずにNetflix加入。
家で観るのに慣れてきたのもあるかな。
自分には衝撃的でレビューできずにいました。
(元より自宅鑑賞分ほとんどできていないのですが…)


元はオリバー・ストーン監督によって映画化される予定だったが、頓挫し、プロデューサーがスパイク・リーに声をかけた脚本。
スパイク・リーとケヴィン・ウィルモットで
白人ではなく黒人達が主人公のベトナム帰還兵を扱った脚本に書き直された。
大手スタジオでは断られ、Netflixで映画化に至った。

少し前の「WAVES」のレビューで、
ルーカス・ヘッジズとテイラー・ラッセルを
“天使”と表現したが、
それが出てきたのは、その前に今年“天使”を感じた映画があったから。
今作のチャドウィック・ボーズマンだ。
残念ながら出演時間は多くはないが、
今作で、ベトナム戦争時彼らの隊長だったノーマンは正に天使だった。

冒頭に入る数々の実映像。
所々に散りばめられたたくさんのオマージュ。
スパイク・リー監督のセンスと熱意が光る激しい色彩美、カメラワーク、変化するアスペクト比。
ストーリーでの、
ベトナム戦争へ出征した黒人達と、彼らの敵、望み、そして罪。
帰還兵達のトラウマ、それだけではなく
繰り返される支配や自国が戦場にされたベトナムの人達に残されたもの。
その背景にあった大国の思惑。

要素の多さはハレーションを起こしそうなほどで、
観る人によっては過多とも取れて、
色々な意味で評価は分かれてしまいそう。
だが、これをやってのけるパワーはスパイク・リーの持ち味でもある。

ベトナム戦争の構図や構造をここまで表した作品は他にないと思うし
文字通りこちらに迫るように投げかけられるトラウマに苦しんだ退役軍人ポールの長い独白は、想像を超えるような悲痛さで
傷口が叫んでいるかのように心を蝕んでくる。

「地獄の黙示録」でファイナルカットを最も高く評価するのは、フランス人のプロットが印象的に仕上がっているからである。
ここは大切だと思う。

ストーリーは重く激しく難しい部分もあるが
最後の最後は猛烈に胸が熱くなった!
そういうとこ好きだよ!スパイク・リー🔥💜🔥💜🔥
お見逃しないように。
マーヴィン・ゲイの楽曲も良かった。


カオスの中、映し出される彼らの元隊長ノーマンの姿は、
戦場にあっても
思い出のモノクロームであっても
一際輝いており、
彼らのそして観る側の希望だった。
“モノクロームの天使”
それを醸し出せたのはチャドウィック・ボーズマンという人のすべてであったのだと
今だから言えるずるい言葉を以て
このレビューを締めさせていただく。


2020自宅鑑賞No.33/115


歴史映像の数々は日本では、あまりなじみのないものが多いかもしれないけれど
アメリカではそうでないだろうと思う。
多くの要素はぜひ作品を観て体感してほしい。
ベトナム戦争について少し予習しておくのも一つの手です。観終わってからでも良いし、Netflixなら観直せるし。
ただ、観終わってめちゃくちゃ疲れました。
スクリーンでいつか観るなら体力備えて行きたいところです。
ポール・ウォルター・ハウザーを見ると少し安心してしまう自分がいます。

今回いつもより遅れてしまいましたが、
またぼちぼちと復活します🙇
空海花

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