さうすぽー

哀愁しんでれらのさうすぽーのレビュー・感想・評価

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)
4.2
自己満足点 83点

土屋太鳳がこの映画のオファーを3回も断ったのも納得です(笑)
この映画ほど賛否が真っ二つに割れそうな問題作は今年の邦画では現れないでしょう(むしろ現れたら怖い)。
これは社会的テーマを孕んだ"おとぎ話的サスペンスホラー"だと思っています。


"おとぎ話的"というのは、タイトルロールにもなっており、劇中でもたびたび示唆される「シンデレラ」のストーリー前半で描かれ、後半にはシンデレラストーリーの"怖い部分"が描かれる等、終始にわたって「怖い童話」的な不気味さを漂わせた作品であり、個人的にはその不気味さと怖さを楽しむことが出来ました。

そのおとぎ話的な怖さに、結婚と夫婦生活との理想と現実や、結婚する前と後の結婚相手の一面の変化による怖さも兼ね備えているので、二重の怖さを体感しました。

まぁ、劇中にわたって田中圭演じる病院の院長とその子供が不気味なんです。
一見爽やかで優しそうな田中圭と無垢そうな娘は前半から少し怖い雰囲気を醸し出しており、後半からはその不安感が見事に的中し、豹変する様は本当に怖いです。

田中圭と結婚した後のストーリーに少し既視感があったのですが、考察記事を読んでそれがグリム童話最大の問題作である「青ひげ」であることに気付きました。
このように、日本のサスペンスに怖いグリム童話の要素を入れた映画であるのが少し斬新で良かったです。

また、冒頭の土屋太鳳が不幸の連続に合う下りは少しブラックコメディ的な描かれ方をしていたのも奇抜で好きでした。


そして、一番物議を醸しそうなラストシーン。
ある意味だいぶ人を喰ったような展開ですし、自分も観たときは少し吐き気を催しました(それこそ青ひげのような血みどろだったら確実に吐いたかと)。
もう土屋太鳳と田中圭が仕出かした事は本当に"サイコパス"としか言いようが無いくらいの事です。
なので胸糞と言われていますが、彼らにとっては完全なるハッピーエンドにも感じます。
胸糞映画とも言えますが、ある意味今まで観た邦画の中では"最も狂ったハッピーエンド"とも言えるでしょう。
(ちなみに、この展開に某有名タイトルの主人公の行動を彷彿とさせた↓以下ネタバレ参照)

それにしても、土屋太鳳は演技上手いですね!
自分の幸せを求めながらも運命に翻弄されて感情が剥き出しになる様が本当に素晴らしいです。
田中圭も、今まで観たこと無いような演技が観れたので大満足です。


ただ、最後まで観てモヤっとした所があります。
田中圭の娘の行動ですが、劇中でかなり自分勝手な行動を起こして土屋太鳳を悩ませるのですが、「何故そういった事を起こすのか?」というのが結局よく解りませんでした。
恐らく、そこは観た自分達で考えさせるためにそうしたのかもしれませんが、個人的には娘の行動にどうも一貫性が感じられなかったです。


少し解らない部分があったりと問題もありますが、サスペンスホラーとして僕は楽しむことが出来ました。