亘

パラサイト 半地下の家族 (モノクロVer.)の亘のレビュー・感想・評価

3.8
【明暗】
※内容・ストーリーについては、カラー版に記載のため割愛。(https://filmarks.com/movies/83796/reviews/79093189)

モノクロ版になったことでの最も大きな違いは、地上と半地下・地下の対比がより鮮明になったことだろう。明るいところはより明るく暗いところはより暗く、格差が鮮明になっていた。地上のパク家の豪邸は明るく全体的に画面も白い。特に庭の明るさを強く感じる。一方で半地下は昼間でもそれほど明るくないし、地下は暗い。もともと格差を扱った作品だったけど、モノクロにすることで白→グレー→黒というような色調変化でそれぞれの立場が強調されている。

カラー版のレビューでも引用したけれども、ABBAの曲"Money, money, money”のサビにはこんな歌詞がある。
Money, money, money
Always sunny In the rich man's world"
(金、金、金。金持ちの世界はいつも晴れている。)
まさにモノクロ版での地上のパク家の明るさは、この歌詞を強調している。

そしてもう1つモノクロ版で強調されたのはエンタメ性だろう。パラサイトのエンタメ性で最も大きなポイントは地下の人々の存在。カラー版では、「そこがあるのか」という意外性が大きかったけど、モノクロ版だと暗いからこそホラー感が出てくる。特にパク家の長男ダソンのトラウマとなった事件のシーンは、本当にホラー映画のよう。

最後にモノクロ版で印象的だったのは、終盤のモールス信号のシーン。黒い画面に玄関灯の点滅が映えて、切なさが増していた。

概してモノクロ版を見てよかったけれども、初めて見るにはカラー版の方がよいと思う。パク家の美しさや半地下・地下の汚さはカラー版の方が分かるし、内容の把握はカラーの方が向いているだろう。しかし内容を分かったうえでモノクロ版を見ると格差の対比がよりわかるし新たな見方ができる。よくディレクターズカット版とかはあるけれども、新鮮さということでは本作のようなモノクロ版の方が楽しめるかもしれない。
亘