フィクションだけど、叙事詩。生き辛くなってしまったヤクザという主役を通して、「排除」の日本を描いている。
寛容でなく、弱い者を叩く社会をも。人権まで奪う社会をも。
監督は、いままでになく空撮で工場のプラントを俯瞰して主観を外してしるように見えるが、14年ぶりに帰ってきた主人公の主観は保たれ、観客も時代の変化を実感できるようになっている。
暴力と犯罪はもちろん罪だが、償った者へも容赦のない社会はどうなのか。
法律という権力もまたどういうものなのか。
監督はそれも問うている。
それも「家族」を軸にして。
仁義が死んでしまったのはもちろんだが、ヤクザ社会以上に人情が、というより感情移入や共感が、現代には無くなってしまった。
だから、この物語がよりエモーショナルになる。
綾野剛の演技が生きて、格好いい。だからエモーショナルな光景としての海で終わるのだろう。
ヤクザ映画を変えた『仁義なき戦い』、『アウトレイジ』に次いでその時代を区切る映画だ。