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ヤクザと家族 The Familyの06のレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.3
「何でヤクザやってんの?」
「家族だから、何でとかない」

この映画は、この一言に尽きると思った。
辞書には【ヤクザ:生活態度がまともでなく、真面目な職業についていない人間の事】と書いてある。世の中には、そういう風にしか生きれない人間がいるのだ。この映画は、その人間筆頭の綾野剛が、ヤクザに拾われ疑似家族を成すような話だ。実の父親よりも父親らしい親父。頼れる兄貴。可愛い弟分。でも2019年には、彼らの居場所はなかった。

家族を大切にしたい、家族と一緒にいると幸せ、家族のためなら何でも出来る。この気持ちは誰でもわかるだろう。でも時代が彼らに立ちはだかる。ヤクザであることで居場所を得た人間たちが、ヤクザだから居場所を奪われていく。
その時代の残酷さが、映画の後半に綾野剛の視線を通して描かれる。真人間として生きたいと思っても様々な困難が立ちはだかる様子は観ていて辛い。しかし、彼らはやっぱりヤクザなのだ。私の考える普通の人間と彼らの大きな違いは、「暴力」を問題解決の手段として持っているかどうかである。時代の変化について行けなければ、手持ちの道具で勝負するしかない。
話の展開としては、いくらでも哀れみと同情を誘う結末に出来ただろう。でもあのラストは、変化出来なかった人間への厳しい視線に思えた。

この映画がすごくいいなと思ったのは、最後4分。ヤクザでもない、家族でもない。それでも人は繋がっていく。変わった時代で、また新しい家族が形成されていく予感に、思わず涙する。
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