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キングダム2 遥かなる大地へのsanbonのレビュー・感想・評価

3.8
間延びの弊害。

今作は、コロナの影響を受けて海外ロケを行えないながらも、CGの力を(日本でやれる)最大限に駆使して、壮大な映像に仕上げていた点で言えば、超大作の名に相応しいクオリティで製作されていたと感じた。

しかし、一つの戦のみを取り上げた事により、前作で見せたロードムービーのような場面の移り変わりは失われ、いわゆる"画変わり"には極端に乏しい印象となってしまっており、展開ですら同じ事の繰り返しに終始してしまっていたのは、今作における明らかなマイナスになっていたようにも思う。

というのも、今作で描かれる「蛇甘平原の戦い」は、原作漫画でいうところの5〜7巻の僅か3巻分であり「信」の初陣という意味では重要なエピソードではあるが、連載初期という事もありそこまで濃密に描かれた戦ではないというのが一つの要因でもある。

また、平原の戦いというだけあって、騎馬隊や戦車隊などで賑やかにはなっていたが、絵面としては荒野が延々と続いているだけであり、戦略なども基本は信の化物じみたフィジカルを筆頭に敵軍を蹴散らし、徐々に進軍してはまた会敵して応戦してを繰り返す為、中盤あたりは特に何度も同じ映像を観させられているような錯覚に捉われてしまう程だった。

正直、この内容であるならば100分前後で展開させた方がより良く纏まる筈なのだが、なまじ大作映画を背負って立つ作品だけあって、120分を超えない尺には出来なかったのか、本作はトータルで134分も上映時間が設けられている。

本来134分もあれば、原作漫画の5巻分相当は担保出来るくらいの長尺である筈なのだが、今作はそれを物語の進捗ではなく、戦闘の引き延ばしによって埋めている。

その上で、国内ロケと悟られない為なのだろうが、小隊との対戦などではやたらこじんまりとしたカメラワークになっていたり、スケール感を必要としない会話劇はやたらとシュールに映ってしまったりと、気になる点が前作に比べると多い印象を受けてしまった。

まあ、それでも邦画という括りだけで見れば相当頑張っているし、キャストの演技も引き続きの熱演で、この作品への思い入れがダイレクトに伝わってくる点では相変わらず素晴らしいものにはなっていたので、上映終了後に「3」の予告も早速流れたが、次回も劇場へ足を運ぶ事にはなるだろう。

それにしても、今後の展開はより一層ファンタジーじみてきて、実写向きではなくなってきそうなのだが、原作に忠実をモットーとしている分、果たして見た目に滑稽さが生まれないかは些か不安である。
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