舞台は1840年代、イギリス南西部の海沿いの町ライム・レジス。
そこで母と2人倹しく暮らす
古生物学者メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)
そこに裕福な化石収集家の妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)が現れる。
監督はフランシス・リー。
この時代に生きる女性の世界のように
その海は荒々しく、昏い色をしている。
シャーロットは黒い服に暗く沈んだ顔。
夫は静養とかこつけて彼女をここに置いて行ってしまう。
鬱は家族のケアが1番大事なのに。
最初は冷たいメアリーだったが
看病を通じて、2人は互いに惹かれ合うようになる。
目覚ましく回復させたのは軟膏を塗る彼女のその手、ではなかっただろうか。
彼女の心のような狭く暗い室内に
シャーロットの可憐な笑顔と明るい肌がまばゆい。
女性同士のラブシーンは終わりがないように見えた。
ここは2人で話して作られたようで
でも妙に納得するところもあったりして。
メアリー・アニングの人生は少しずつ静かに語られる。
子供の頃にイクチオサウルスの化石を発掘し、大英博物館に買い取られる。
父を早くに亡くし、彼女が生計を立てることになる。
彼女はその後も発掘作業を続け、それらを売って細々と生活するが、発掘した彼女の名前は書き換えられているという描写もある。
繊細でセンスも根気も必要な大変な作業。
ストーリーはフィクションだが、実在の人物でこの辺りは事実のようだ。
シャーロットは、そんな岩場の中に閉ざされ隠されてしまっていたメアリーの心を見つけ、解き放った。
メアリーは自身の存在が明らかになるような心地がしたのではないだろうか。
でもシャーロットの願いは…
エリザベスは音楽会でシャーロットと打ち解けていたけれど、あれはキツい。
波の音、風の音、鳥の声
映画の静かさがメアリーの生活と孤独感を映し出す。
ラブストーリーでありながら
階級社会の色濃さが際立つ。
メアリーの誇りを讃えたい。
この後の2人…
男性社会や学会の構造と不平等、
恋愛の自由とエクスタシー
様々な未来の元は
アンモナイトの記憶の中に。
考古学は未来への始まり。
シアーシャは序盤の変化が良かったが
途中からはケイト・ウィンスレットに肩入れしまくってしまった。
真摯な態度が窺える良作だけれど
そのぶん客観性が過ぎたかな、という弱さを感じた。
2021レビュー#114
2021鑑賞No.217/劇場鑑賞#22
『燃ゆる女の肖像』と比較されている方が多かったので、こちらを先に観ることに。
監督の次回作はホラーだそうで
この音使いは気になる🤤
大英博物館行きたくなった…