mito

アナザーラウンドのmitoのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.7
2021年100本目。
常に血中アルコール濃度を0.05%に維持する事で常に幸福感を得られる…そんなトンデモ理論を4人の教師たちが実証する。

兎に角、設定が最高にキャッチーな作品、ではあるが、予告編の雰囲気のようなアップテンポなコメディ路線にはならず、正にヨーロッパ映画のような大人しさ、陰鬱さ、メッセージ性が主となる。

冒頭の学生達の乱痴気騒ぎが終えると、突如、音楽も無い静かな雰囲気の中、ある高校の世界史講師の何とも言えない中年の哀愁漂う日常が語られる。
そんな彼が同じ教師である親友の誕生日に呼ばれた時、前述の理論の話になる。

ここから、しばらくの間、血中アルコール濃度0.05%の恩恵で、残念な生活が明るさを取り戻し始める…のだが、速攻で「0.05%の縛りを止めないか」という提案が。
…ちょっと早い気がするし、こうなってくると結末は分かり切ってるよね…で、案の定の崩壊を起こす。

ただ、この映画、設定通りのコメディ路線なら破綻して終わりだが、しっかりと人間ドラマを繰り広げている。
お酒を題材にした、それぞれが干渉し合い事で得られる生き甲斐や生きる意味を語る、酸いも甘いも抑えた人生讃歌映画なのがこの作品。

マッツ・ミケルセンも終始、くたびれてるか、ほろ酔いか泥酔か、素面である事が殆どないが、ラストのようやくミケルセン起用の意義が一気に上がるキレッキレのムーブは、そこに至る経緯も含め最高のワンシーン。

ただ、こういうドラマティックな映画も良いが、エドガー・ライトよろしく、コメディ一辺倒な路線もちょっと観たかった。
mito

mito