映画仕立ての舞台を観ているようだった。
蒼井優と高橋一生の演技がとにかく美しい。世界に入り込むとか感情移入といった類を超えて、極上のディナーを嗜んでいるようだった。
ぼくは食に疎いので、むしろリアル極上ディナーよりもこちらの方が美味い。
黒沢監督の調理がくどければくどいほど、2人が活き活きしてくる。
クロスカッティングからの、決めの小津カットも2人の表情を彩るスパイスになっている。
『いだてん』の豪華オープンセットの転用に、ワクワクしている監督の姿も想像できて、なんとも楽しいひと時だった。
こうなってくると、複雑なプロットなど必要ない。むしろ分かりきっているくらいがちょうどいい。スパイがどうのこうのなんて、もはやどうだっていいのだから。