Rick

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのRickのレビュー・感想・評価

4.8
 「スパイダーマン」たちの避けられない運命。肉親の死、愛する人の死、愛する人が愛する人の死、そして圧倒的な孤独。その悲しみをうちに秘め、マスクで顔を隠し、冗談めかしたお喋りで以て街の平和を守る。それがスパイダーマン。決して変えてはいけない鉄の掟。たとえ、救えるはずの目の前の人を見殺しにすることになっても。でも、仮にそれで全を救えたとしても、果たして「ヒーロー」たり得るのだろうか。宿命という何か大きなものに囚われて、自分の物語を失うことは「ヒーローの物語」なのだろうか。
 どうしようもない悲しみを抱えていたとしても、孤独に苛まれていたとしても、同じ思いを分かち合ってくれる人がいるから生きていける。それを教えてくれた前作に対し、「同じ思い」が呪いになり、個を滅してしまう恐ろしさを伝えるのが今作であろう。「こういう属性の人はこう生きねばならない」というレッテルや固定観念で自分を縛ってしまって、今いる場所を不安に思ったり、迷ったりしては居ないだろうか。自らが愛されていることを忘れては居ないか。必ず自分には帰るべき場所がある。外の世界で打ちのめされても、尾羽を打ち枯らしても、受け止めてくれる場所がある。だから迷わず進めと言ってくれる。
 前作でもびっくりするくらい映像が尖りに尖っていたけれども、より進化して、より没入感がある映像表現の波に溺れる感じ。途中皆の言葉に涙腺が緩みっぱなしだったが、よくよく考えるとプロット上の「スポット」もあるような気がする。何よりもびっくりしたのが、これ「帝国の逆襲」やったんかいな。
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