つかれぐま

夏への扉 ―キミのいる未来へ―のつかれぐまのレビュー・感想・評価

3.5
21/6/28@調布#10

僕はピート🐱の肩を持つ。

60年前のアメリカの原作が、ちゃんと今の日本の話になっている。これは良い改変だ。難病、貧困、ヤンキー・・そんなのばっかの日本映画には希少なスマートな後味。

原作には僅かしか登場しないリッキー(璃子)を最初から登場させて、主人公と彼女のラブストーリーを軸にする。その分、主人公の努力家才人ぶりが手薄になりかけるが、それを2025年に周囲の人々が主人公へリスペクトを見せることで補う。

中でも(原作にはない)AIのピートの活躍が良かった。彼が主人公を見つめる眼差し(藤木直人好演!)。創造主への尊敬に溢れるそれが、実は本作で一番好きだったところ。璃子との恋愛以上に、この不思議なバディの共演がもっと見たかったような。

有名な原作の初映画化だが、実は既に「楽曲化」はされている。1980年に山下達郎が「夏への扉」という曲をアルバムに収めており、その歌詞にはピート🐱やリッキーが登場する。そしてこの曲の雰囲気が本作にとても近いのだ(エンドロールにはこっちを使って欲しかった)。おそらく本作のスタッフはこの曲に少なからずインスパイヤされたんだと思う。もちろんそれは悪いことじゃあない。ハインライン(小説)→山下達郎(音楽)→本作(映画)と、時空を越えたポップカルチャーの継承が素晴らしいね。