てつこてつ

嵐ケ丘/嵐が丘のてつこてつのレビュー・感想・評価

嵐ケ丘/嵐が丘(1939年製作の映画)
3.3
エミリー・ブロンテの原作小説の大ファンとして、映像化作品を鑑賞するのは1992年製作のジュリエット・ビノシュ、レイフ・ファインズ主演版に続く二作目。「ベン・ハー」「ローマの休日」を手掛けたウィリアム・ワイラー監督作品なので期待に胸を大きく膨らませて見た。

上映時間105分である事に不安を覚えた通り、原作が何十年にわたって描かれる大作なので、92年版同様、ストーリーのエッセンスだけをギュッと詰め込んだような荒技、キャラクターの心情を描ききれないまま繋ぎ合わせてしまった脚本、まあこの時代のクラシックな作品にありがちなロマンチックな音楽を終始流して作品を盛り上げる・・といったメロドラマっぽい手法で、やはり、原作が持つ壮大なロマンや、“愛憎相半ばする”といった深い愛情の裏返しである憎悪・・といった感情を、これだけの巨匠の手によっても描き切れていないのが残念に感じた。

実際、なるべく原作に忠実に映像化するとしたら3時間の上映時間は絶対に必要になると思われ、致し方ないのかも。

ただ、ヒースクリフを演じた若き日のローレンス・オリヴィエは、その野性味たっぷりで立派な体格を活かしており、原作のイメージにはピッタリ。キャシー役のマール・オベロンも、インドとイギリスのハーフという独特の美貌で、ヒースクリフを翻弄し、魅了してやまない役どころの雰囲気は十分に持っており、いいキャスティングなので1992年版よりは好みかな。ただ、この時代のイギリスの女優さんでは「風と共に去りぬ」のイメージが強いせいもあって、ヴィヴィアン・リーだったら、より気性が激しく情熱的なキャシーを表現できそうだったなあと勝手に思ったりもする。

ロケとセットで撮影されたと思われる荒涼たるヒースの丘の描写もなかの物で、特にヒースクリフとキャシーの絆の地として描かれる岩山のシーンは素晴らしい。

デヴィッド・ニーヴンも若いなあ。

原作ファンをも十分納得させることが出来る映画化作品がいつの日か製作されることを祈りつつ・・。
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