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シドニアの騎士 あいつむぐほしのSHIMABOOのレビュー・感想・評価

2.0
 言っとっけど、俺は弐瓶勉作品は好きだし、原作漫画全部読んでるし(アニメは未見)、自慢じゃないが「BLAME!」の漫画も新装版で全部揃えてるいや自慢でしたスミマセン。

 いや何がマズいってこの映画、ストーリーを右から左へと絵に換えているだけで、「構造」が無いじゃないか!因果律や伏線は無いに等しいし、それ以上に映画全体を貫く「何か」が全く見えてこない。曖昧な言い方で恐縮だが、有り体に言えば漫画原作を映像化する際に多くが陥りがちなヤツである。こんな脚本にGOサイン出した奴は一体誰だ!セリフに関しても、お世辞にも洗練されているとは言い難い。その歯切れの悪さに、観ている間じゅうムズムズしっぱなしだった。一体誰だこんな脚本に(以下略)

 あと演出のテンションも高過ぎ。全部が見せ場じゃい!と言わんばかりのイケイケ演出だが、いやお前はピーター・ジャクソンかい!(或いはマイケルベイ?)つまり、演出がアップテンポのまま”一定”なので、退屈とはちょっと違うのだが、やっぱり疲れてくるんである。逆にダルイとまで思った。

 罵詈讒謗はこの辺にしておくとして、やはり弐瓶先生のプロダクション・デザインとクリーチャーデザインを忠実に映像化した点は、文句なしに評価されるべきだろう。戦闘シーンの演出が(やはりというか)すっ飛ばし気味だったので、衛人のメカニカルなディテールをあまり堪能できなかったのが残念ではあるが。

 あと、飯を食う描写とか、つむぎちゃんのキモカワイイ表情とか、なかなかよく出来てる。おそらくこの辺で部分的に手描きを採用したと思われる。違う作品でも同じハードやソフトを流用して制作せざるを得ないため(設備交換には途方もない金がかかるのだ)、画のルックがどうしても「量産型的」になってしまうところがポリゴン・ピクチュアズ他CGアニメーションの根本的な問題点だった訳だが、ここに来て打開策を模索し始めてきているということで、かなり良い傾向だと思う。確かディズニーの『モアナと伝説の海』か何かでも、同様の試みがなされていたはず。前田有一も言ってたが、CGアニメは今や「揺らぎ」を求める段階に入ったのだ。

 音響ももちろん良かった。ドルビーアトモス非対応の普通の劇場で観たけど、特に不満は感じませんでした。まあ観れるならソッチの方が良いに決まってるんだけど。

 最後にサプライズというか、エンドクレジットがまさかのオール東亜重工フォント。読みにくいったらありゃしないが、デザインとして非常にカッコいいので目の保養になった。中身もそうだが、ここまで終始一貫して一見さんお断りの姿勢を崩さないとは。まあ良いんじゃないでしょうか。
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