けまろう

ウルフウォーカーのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

ウルフウォーカー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『ウルフウォーカー』観賞。アイルランド三部作の最後の作品。『ソング・オブ・ザ・シー』は越えられないだろうと思いきや、アニメーションのクオリティ(作画も構図も)が更に上がっているし、何よりキャラクターデザインが高いレベルで洗練されている。
イギリスからやってきた余所者のロビンとビル父娘。ビルは新しい土地で娘と生き残ろうと必死にハンターの仕事を遂行する。街の子供たちにも馴染めず、どこか拠り所のないロビンは父親の狩りを手伝おうと猟銃を持って森に入るが、そこで出会ったのがウルフウォーカー(アイルランド版狼人間)のメーヴであった。ストレンジャー同士、惹かれ合い友情が芽生える。
その一方、農地を拡大しようと狼を駆逐して森を略奪しようとするのが町の権力者である護国卿。敬虔なピューリタン派のキリスト教徒で、イギリスから来たビル父娘を目の敵にしており、その使命に従い極端に厳しい態度で行政に臨む。
そうした強行策が、自然との共生を望む人々と自然を排除しようとする人々の分断を生み、町は護国卿の扇動と狼への恐れとで大騒動に。
そしてメーヴに噛まれウルフウォーカーになってしまったロビンは、人と狼の架け橋となる存在になるはずが、父親から命を狙われる羽目に。益々大きくなる民衆の狼への恐れに、最早人とウルフウォーカーが共生ができないと悟るロビン。母親を探すメーヴに森から逃げるよう伝える。
最後は囚われたメーヴの母も戻り、ロビンだけでなくビルもウルフウォーカーとなり、人とは距離を置いて仲睦まじく暮らしているシーンで終わる。最初から最後までストーリー含めて素晴らしい作品。
ケルト文明では狼は人よりも偉大な存在だと思われていたようでそこにアイヌ的価値観を感じる。カムイの領域に踏み込む人々、場所は違えど人の本質はやはりイカロスなのか。
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