名作『サイタマノラッパー』シリーズの入江悠監督作品。
突如、自身が実は忍者の末裔であったと告げられた女性主人公が、忍者テクを駆使し、行政から自殺に追い込まれた自身の大切な人の無念を晴らすべく、行政の闇を晴らそうとする風変わりな社会派コメディー。
上記シリーズ同様、相変わらず入江監督、日本の(田舎寄りの)地方都市のイヤ~な感じを描くのがうまい。
あらゆる社会的・歴史的なひずみの集積の結果、めちゃくちゃ「不健全」な状態で均衡してしまった地方都市のエコシステムを、悲壮感を帯びた笑今の形でアウトプットする構成力はお見事。
また、本作は上述の通り読んだ時点でワクワクするあらすじを持っていて、ここから期待されるものがしっかり形にされていた結果、純粋に期待値通りには面白い作品に仕上がっていたと思う。
ただ一点、コメディー映画として面白い作品だからこそ、「社会派」な要素がノイズになっている感は否めない。
もっとこう、リアリティーのない条件設定をして行政側を絶対悪に仕上げることも出来たろうに、「外国人労働者の社会的受容性」みたいな昨今ホットなテーマを据えちゃってるので、その課題認識にどのような解を示してくれているかがどうしても気になって来る。
そうなると悪側にもそれなりのリアリティーを求めたくなるんだけれど、如何せん本作は悪側にリアリティーがないというか、意図的に現実味を捨てて超絶カリカチュアされちゃってるもんだから、「その課題設定をしていてその解決方法て~・・・」ってなっちゃった。
ということで、むしろその社会的なテーマ設定自体をただの記号的な背景情報として脳内処理すれば良かったんだろうけれど、それなりに真っ当な社会人たる私から見ると、それはなかなか無理ゲーでした。
ま、面白かったのは面白かったけれど、若干もったいなかったな、という感想。