空海花

アイダよ、何処へ?の空海花のレビュー・感想・評価

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
3.9
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争末期の
1995年7月「スレブレニツァの虐殺」
国連平和維持軍で通訳として働く女性アイダが、必死に家族を守ろうとする姿を通して、その惨劇を描く。
監督は長編デビュー作『サラエボの花』が2006年ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ。
本作は2020年ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門正式出品作品
2020年ロッテルダム国際映画祭観客賞
ボスニア・ヘルツェゴビナ映画として、
アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート
ボスニア・ヘルツェゴビナ=オーストリア=ルーマニア=オランダ=ドイツ=ポーランド=フランス=ノルウェー=トルコ合作

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争とは、1991年以降のユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国が解体する過程で起こった内乱。
6つの共和国の一つであったボスニア・ヘルツェゴヴィナ地方において、
独立か否かをめぐり、
ボシュニャク人、クロアチア人、セルビア人の3勢力が1992年から1995年まで内戦を繰り広げた。
映画ではセルビア人勢力のラトコ・ムラディッチに率いられたスルプスカ共和国軍が、国連指定の安全地帯であったスレブレニツァに侵攻を始めるあたりからといったところか。

スレブレニツァの安全地帯には市民が殺到。
だが全員を収容できないまま入口は閉ざされる。
多くの住人が外に残され
中に入っても食糧もトイレも全く足りない状態で、人々はひしめき合うように座りこむしかない。
国連平和維持軍に携わっているオランダ軍の高官が食糧や物質の支援、また爆撃要請をしても受け入れられることはない。
国連の無力さに怒りが湧きそうになるが
観ているこちらもどうしたら良いのか、
何が良いのか途方に暮れる。
実際、国連平和維持軍の人員は全く足りておらず、相当苦しかったようだ。
物資の不足で餓死者が出る程だったという。
国連の(本部の方は)直接は描かれないが、在り方は問われなくてはならない。
平和維持軍と国連軍はまた異なり、
後者の正規の意味での多国籍軍が編成されたことはこれまでないようだ。

その中で自分の家族の安全というただ1点の目的に必死に執着するアイダ。
他人に何を言われようが、どう思われようがお構いなし。
時と場が違えば、利己的と批判もできよう。
だが、それこそが端から見ているだけの綺麗事。
相手を信じられないと思いつつ、ルールに従うしかないのは諦めか考えるのを止めた時か。
でも、本当にどうしようもない時に
人はどうすればいいのだろう。
言葉を失う。

虐殺を描いた映画だが、直接的に残酷な描写は全編を通してない。
怒り、燃えるようなアイダの視線が脳裏に灼きつく。
だが事件からの映像は、衝撃的なものばかりで、一気に心が冷えた後
驚きの連続だった。
民族は違えど、昨日の隣人だったはず。
すぐそばでは子供たちがサッカーをしていた。
対立に関しては宗教や民族にはあまり触れてはいない。善悪に分けない構図は見事。

ラストシークエンスの子供たちが表すものは何なのか。
物凄く不安に掻き立てられた。


史実では
共和国軍は7/11にスレブレニツァ中心部を制圧。
7/12には同地に居住していたイスラム教徒のボシュニャク人の男性すべてを絶滅の対象とし、8000人以上が殺害された。


2021レビュー#170
2021鑑賞No.385/劇場鑑賞#70


ちょっとまだ調べと考えが甘いところが多くてうまく書けない。。
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