しゃび

いとみちのしゃびのレビュー・感想・評価

いとみち(2020年製作の映画)
4.5
駒井蓮さん、『名前』の時すごく良かったから気になってたんだけど、やっぱりいい。すごくいい。

自分でも演技をするようになって、プロの役者さんがどう演じているのかを、昔よりも見るようになった。


演技の感情表現には3つあると感じてる。
(ぼくが勝手に思ってるだけだけど)

「発散する芝居」
「含ませ芝居」
「見せない芝居」


例えば「悲しい」という気持ちを抱いてるとして。

さめざめと泣いたり、怒りとして何かにぶつけたりするのは「発散する芝居」

逆に元気に振る舞ったり、少し物憂げな素振りを見せたり、直接ではない見せ方をするのを「含ませ芝居」

外側からは何も表出させないけれど、結果的に伝わってくるのが「見せない芝居」

「見せない芝居」はすごく難しい。
台本やキャラクターに感情移入すればするほど、見せてないつもりでも見えてしまう。


感情をうまく外に出せなくなってしまった内気な主人公を、ここまで抑制的に演じているのはすごい。

お父さんが豊川悦司さん、父と娘という関係性からどうしても『子供は分かってあげない』を思い出す。

本作の駒井蓮さんにしても、『子供は分かってあげない』の上白石萌歌さんにしても「見せない芝居」が本当に上手だ。

「目は口ほどに物を言う」というけれど、
口では黙れても、目を黙らせるのは難しい。

この映画は津軽訛りが強く、会話の内容が分かりづらいのだけど、これもいい。
言葉の内容ではなく音で表現されていて、まさに映画は音と映像なんだと感じさせてくれる。

また、どのシーンもやたらと物が多く、散らかっているのも、背景から人を想像できるように作られていて、いろんな意味で粋な作品だと思った。


【ここからは余計な一言】

強いて言えば、意味付与的なカットがちょいちょい入っているのが余計に感じた。

せっかく、直接的な表現を避けているのに、時折直接的なカットが入ってくるので、やや冷めてしまうところがあった。

また、これだけ部屋で見せられているので、山で締めない方がぼくとしては好みだった。


とはいえ、そんなことはさておき、とてもいい作品だと思いました!
しゃび

しゃび