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ベイビー・ブローカーのTSのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.3
【人身売買の闇】73点
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監督:是枝裕和
製作国:韓国
ジャンル:ドラマ
収録時間:129分
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 2022年劇場鑑賞35本目。
 残念ながら評判ほど良いとは感じませんでした。良くも悪くも是枝監督の作風が全面的に押し出されていて、それが韓国ならではの社会現象とマッチしたかというとやや微妙なところと感じました。「家族」をテーマとする映画をよく作る是枝監督ですが、個人的には『万引き家族』以来ややフィットしにくくなっています。恐らくそこにはどことなく犯罪を是とする風潮があるからひっかかるのかなと思えるのですが、今作においても主人公達を良く描いているのでひっかかります。無論赤ん坊といえど人身売買にあたる案件。決して許されない行為の中、どうすれば我々は主人公達に感情移入できるのか。そのあたり、僕としてはなかなか難しかったので今作も『万引き家族』も平均くらいにおさまってしまったのではと思いました。

 冒頭から生々しい現実。産みたくもなかったのに子を産んだ親が赤ん坊を置いていくシーンから始まり、主人公達はその赤ん坊を預かり必要としている人たちに売ろうとしていきます。確かに子を捨てる親が一番悪く、それを必要としている人に金銭が伴うとはいえ届けようとする主人公達が正義に見えてしまいます。ここが『万引き家族』と似ている点であり、諸事情があれば犯罪は致し方無しとなっているのが引っかかるところです。

 僕は、韓国映画は厳しい現実をこれでもかと映像におさめることを得意とすると見受けています。なので、今作においても子捨てと人身売買の社会問題を徹底的に描いてほしかったです。後味が物凄く悪くなるくらい、となるとまた評価は違ったと思いますが、ここで監督が是枝監督となるとやはりそうはいかないでしょう。是枝監督の作品には家族愛の要素が入ってきますので、やはり犯罪をしてでも家族を支えていかないとというメッセージが入ってきます。そこが自分としては失礼ながらやや生ぬるく、思っていた作品とは少し違うなと思えてしまったのです。無論悪いとは思いませんが、世間の評判と比べてみたら、自分としてはやや物足りなかったなといったところでした。それでもソン・ガンホ達の演技はやはり魅入るものがありますので、このくらいの点数でしょうか。
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