勝ったのは農民だ

ベイビー・ブローカーの勝ったのは農民だのネタバレレビュー・内容・結末

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

【韓国映画ではありますが、監督・脚本・編集を担当した、“いかにも是枝裕和監督らしい映画“です。】🇰🇷

AmazonPrimeVideoで見放題になったので遅まきながら観ました。💻

前のレビューの『ザ・スーサイド・スクワッド “極“悪党、集結』が「ジェームズ・ガン監督節炸裂の映画だ」って書きましたが、
それで言うなら、
今作『ベイビー・ブローカー』は是枝裕和監督節炸裂の映画に見えました。

少なくとも個人的には前作『真実』よりも今作『ベイビーブローカー』の方が断然好きです。

是枝監督の最新作『怪物』はまだ観られてないんですが、
あれもカンヌで評価されていましたし、
坂元裕二さんの脚本でそのタイトルですから、なかなか凄そうですね…。

本当に“世界基準で評価される日本人監督“なんでしょう。🇯🇵

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【ソン・ガンホは間違いないです。その周りの俳優さんも豪華です。】

⑴この年のカンヌ国際映画祭でソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞して話題になってましたけど、
ソン・ガンホは本当に人間臭くて素晴らしい俳優さんですね。🇰🇷👏

『パラサイト/半地下の家族』と見た目はさほど変わってないのに、全く別人に見えます。

これまでいろんな役のソン・ガンホを観てきましたけど、今回はかなり善人寄りの役でした。😄

是枝監督とはまたもう一度タッグを組んで、主演作を撮って欲しいですね。
もちろんポン・ジュノ監督ともまた組んで欲しいです。




⑵次に彼の相棒:ドンスを演じたカン・ドンウォンさん。
自分は名前だけよく聞いていて実際に観たことがなかったんですけど、
韓国版『ゴールデン・スランバー』とか、
『新感染半島/ファイナル・ステージ』とか、

この人だけでも主演を張れるぐらい、すごい俳優さんみたいですね。
ちょっと日本の坂口健太郎さんに似てました。🇯🇵

⑶あと、子供をベイビー・ボックスに置いた母親 :ソヨンを演じたIUさん。
彼女は実際には歌手なんですね。🎤

しかも
“韓国で「国民の妹」と称されるほどの絶大な人気を誇る国民的歌姫“

ってWikipediaには書かれてましたけど、劇中ではやさぐれた感じで全然そんな感じに見えなかったです。
役柄的には腹が立つ部分も色々ありましたけど、彼女は好演していました。👏

あと、「国民の妹」って呼ばれるのは彼女にとって荷が重いでしょうね。
なにより彼女よりも年下の人は彼女を妹とは思えんでしょう。
というか、「国民の〇〇」って表現は個人的にあんまり好きじゃないです。😅


⑷それから、日本でも馴染みのペ・ドゥナさん。
この人も長いですね。調べたらもう43歳というのに驚きです。
今作ではブローカーの旅路を執拗に追いかける刑事さんを好演しています。



⑸あと、途中から旅に同行するヘジン(演:イム・スンス)ってサッカー小僧がいい隠し味になってました。
あのグループの中に子供がいると場が和む♨️というか、賑やかになっていいですね。👦🏻

今作に限らず、是枝監督は子役演出がすごく自然です。


と長々と書きましたが、
自分は韓国語🇰🇷を全く知らないので、演技の上手か下手かなんて分からないんですけどね…。😅

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【自分も子供の頃、洗車機で洗車するのを車の中から見るのが楽しかったのを思い出しました。】🚙

今作をざっくりと言えば、

“里親を見つけるための擬似家族ロードムービー“

でしょう。🛣️

ただ、ロードムービーとしては、
別に韓国の有名な名所を巡るような映画ではないので、あくまでもその過程でみんなが理解を深めていくのが主眼なんでしょう。

冒頭、大雨降りしきる都会の坂道で、『パラサイト/半地下の家族』のワンシーンみたいな始まりですけど、☔️
その冒頭以降は基本的に昼間は晴れた日のドライブシーンが多かった印象です。☀️


自分も子供の頃、洗車機で洗車するのを車の中から見るのが楽しかったんですよね。🚙
あの子が洗車中に窓を開けて「早く閉めろ‼️」ってなるくだりの賑やかな感じを見て思い出しました。😄

警察官に職質されるくだりも面白かったですね。👮


それから“擬似家族もの“👨‍👩‍👧‍👦として、

映画ライター:てらさわホークさんは

『ワイルド・スピード』シリーズや『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを

「“家系“映画」

と表現していましたが、だとしたら今作『ベイビー・ブローカー』も「“家系“映画」でしょうね。
最近観た『ライダーズ・オブ・ジャスティス』や、アニメの『SPY×FAMILY』とか、擬似家族モノはかなり多いですよ。

血の繋がらない者たち同士でも、気持ちが繋がっていれば家族になれます。🧬

逆に言えば、

血の繋がった実の親でも、愛情がなければ家族とは言えません。

『そして父になる』や『万引き家族』にも通底している、いかにも是枝裕和監督らしい話です。

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【その先がどうなったのか❓がすごく気になるラストです。】

ただ、脚本に関して気になる部分もちょっとあるんです。📖

1番気になったのは、

なぜあの刑事(演:ペドゥナ)が
あんなに長く張り込みをしてまで、
ニセ夫婦を使ってまで、

彼らにこだわるのか❓

最初からソヨンが殺人事件に絡んでいると読んでいたのか❓
あの刑事さんがなぜあそこまであの子に親身になるのか❓

いまいち読めなかったんです。🤔
いずれにしても警察官としての職務の範疇を超えています。

ただ、皆さんご存知の通り、
韓国映画に登場する警察官👮ってたいていポンコツですから、😅今回はかなり珍しいパターンですね。




そしてやっぱり「ラストのさらにその先がどうなったのか❓」がすごく気になりました。

終盤、すごく人の良さそうな、おそらくこの人たちなら大事に育ててくれるであろう夫婦が現れるんですが、

彼らの立場やあの赤ちゃんの将来を考えたら、
自分はソヨンよりもあのユン夫婦に育ててもらった方が絶対にいいと思ったんです。


ラストがぼんやりとした着地で観ている側に考える余地を与えるのも是枝裕和監督作品らしいですからそれはよいとしても、

あの夫婦とソヨンとでちゃんと話が纏まればいいんですけどね…。
絶対に何かしら揉めそうな気がします。


そして、サンヒョン(演:ソン・ガンホ)があの後どうなったのか❓すごく気になりました。

劇中で本当に1番の功労者だと思いますから、「彼のその先の人生にも幸あれ」と願うばかりです。🙏

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【少なくとも、自分が子供を持っていない現時点ではソヨンは好きにはなれません。】

元はと言えば、
ソヨンがちゃんと赤ちゃんポストに預けていなくて、サンヒョンたちが保護していなかったら、おそらくあの赤ちゃんは死んでいた話なんです。👼

少し“未必の故意“的なものを感じましたね。
自分の手で殺す勇気もないから。


その段階でソヨンに対して
「お前、どんな理由があろうと絶対に許さねえぞ‼️」
って気持ちになりました。
そこを観ているうちはずっと引きずった感じです。
おそらくもう一度最初から見返しても、序盤は絶対に腹が立つと思います。

しかも後からソヨンは殺人者であることが分かるんですが、

殺人者で、尚且つ子供を一度捨てようとした身にもかかわらず、サンヒョンやドンスに対してやたらと態度がデカいんです。
そこもイラッときました。💢

「あんまり写真で見たほど可愛くないな」
って言われて、ソヨンがブチギレるんですが、💢自分が捨てようとした子供でも馬鹿にされると腹が立つもんなんでしょうか❓


「殺人者の母親を持つと不幸になるから捨てた」ってのも、単に子供を手放す言い訳に聞こえてきます。


でも、是枝監督の作品って

・単純に美談として割り切れない話

・社会規範に収まらない感情論の話

・それを観客に考えさせる、問題提起する話

って多いですから、
いずれにしても観る価値が無いとは全く思いません。🙇🏻

それに自分には子供がいないので、
子供を持つと感想が変わってくると思いますね…。

少なくとも現時点ではソヨンはあんまり好きにはなれません。