タカ

カムバック・トゥ・ハリウッド!!のタカのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

傑作は"奇跡"

ほっこりとした温かみと映画愛に溢れる高揚を与えてくれる作品
大金を積んで見せる派手なアクション、大物脚本家による計算されたミステリー、芸術肌の天才監督によるアーティスティックな画
何のことはない
そんなものなくたって人を満足させる映画は作れる
名優たちが作り上げるゆるりとした時間に思わず、顔もほころぶ
「誰だってカムバックを見たい」
劇中で出てくるセリフに大きくうなずき
70年代ハリウッドという時代がカムバックし、その当時から俳優を生業とする3人が活き活きと演じる様に感動する
そんな感動する内容の映画じゃないのにね

次々と飛び出す名作のタイトル
『サイコ』『死の接吻』『明日に向かって撃て!』などなど
当時から評価されていたものが、今も名作とされるのは当然ではあるけど、何かすばらしい
そしていちギャングが映画タイトルを列挙していくところに彼も一人の映画ファンなんだなと気付かされる
この映画ファンであるという事実が、その後の個人的に大好きなシーンの伏線となる

陽気な狂気のデニーロ節
映画プロデューサーなのに映画撮影中に人を殺そうとする狂いっぷり
嫌いな俳優が亡くなって間髪入れずの大はしゃぎ
不謹慎というレベルを優に超えて笑ってしまう
その事故が原因でライバルプロデューサーに大金が入るといなやの激高
そして企てる保険金殺人
終始軽いノリなのにやってることは真っ黒
真性のサイコパス
時折見える狂気にこれまで演じた役を思い出し、こちらは狂喜する
良い役どころ!

トミー・リー・ジョーンズの悲哀
言っちゃ悪いが自死を選択するほどの哀しみが似合っている
対照的にまだ自らを特別な存在と信じてやまない老人たちの大名行列が痛快
死ぬ間際だったのに演じるうちに生気みなぎる不思議
陥れようとするトラップも知らず知らずにくぐり抜け、デニーロが描いた青写真と真逆に振り切っていくのが楽しい!
この年齢の人にそんなことさせるなよ!と突っ込まずに入られないほど、劇中映画のアクションが過激でそのギャップも楽しい
渋さがカッコよく映る

なんといっても3人の揃い踏み❗️
命懸けの追いかけっこの末にたどり着く寂れたドライブイン
野外スクリーンに映し出されるは劇中映画
それを見つめる3人、そして観終えての歓喜
このシーンが個人的に大好きすぎる❗️
悪巧みするプロデューサー、獲物を追うギャング、かつての輝きに挑戦する俳優
立場は全然違うのに、根本で通じ合っている
共通して持っている想い
それが映画愛
まぁ〜この時の3人の表情が良くて、狙いはないのだろうけどグッときた
きっとキャラ3人だけじゃなく、演者3人の愛も滲み出てるからなんだろうなぁ
とても好きだ

同性愛、黒人映画、女性監督
70年代には到底浸透していないものがある
ギャップの笑いなのかもしれないが、この時代からそれが当たり前であれば良かったのにというメッセージにも感じる
その辺りの細やかさもわりと好きなポイント
そして、デニーロ、ジョーンズが最後に交わす掛け合いがおしゃれ
憎いねぇ

エンドロール中のミラクル社予告最高すぎ❗️
しっかり作り込んでるのはB級映画に対するリスペクトじゃない?
あの予告で観たいと思ってしまう自分もどうかと思うけれど、ちゃっかりデニーロを出してる制作陣の変態性も好き
現実にあったらハマるだろうな、ミラクル社

何か特別秀でた部分はないけど大好き
この先、何度も鑑賞する映画な気がする
万人に受けるから傑作じゃなくて
自分にとって奇跡の出会いと思ったものが傑作
死ぬまでにあと何作品出会えるだろうか?
とりあえず今回
自分にとっての傑作が一つ増えた
タカ

タカ