Yoshitsune

アイの歌声を聴かせてのYoshitsuneのレビュー・感想・評価

アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)
4.8
■【女子高生 x 学園青春ミュージカル x 初音ミクの消失】
学園モノとして満点すぎるサマーウォーズ・ストーリーをアンドロイドをギミックに展開して胸が熱いわあと思うや否や、初音ミクの消失で嗚咽が出るほど思い知った(よね?)献身的な喋るマシンへの抑えがたい愛情を搔き立てられて、苦しくてつらくて最高でした・・・。

ストーリーは王道であるものの、女子高生と女子高生AIがダブル主人公であり、互いに互いのためのヒロインであるところが異色だし、田舎にロボットや巨大な装置があちこちに配置されているを溶け込むようになじませているから王道に見えるだけであって、一歩間違えれば突拍子がなくてお客さんを置き去りにしていたはず。
何でもない1カットにも全て伏線や背景説明があって、ひとえに吉浦監督の手腕だと思います。

土屋太鳳・福原遥の演技が本当に素晴らしくて、特に太鳳さんは愛情と純粋さに溢れた優しい声をされていて、そんな詩音がつらい目にあうものだからこちらもたいへんつらくて夢に出てきそう。それぐらい名演でした。

舞台は佐渡らしいんですけど大阪・京都民的には長岡京市の村○製作所を想起させられました。タイトルでYUIかと思ったけど違うかったです。


■個人的な話
思い返すと2012年ぐらいに「イヴの時間」に出会ってAIに傾倒したんでした。
人型AIが当たり前にいます、なんて大虚構を最初に提示してくる作品なのに、サミィが愛おしくて仕方なかったし、どうして普通の暮らしをさせてやれないんだろう、と悔しくなった。【高度に発展した人工知能は人間と区別がつかない】的な。

それから、人間しか愛せないんだっけ、愛してはいけないんだっけ、ということへの創作的回答を「2001年宇宙の旅」「エクス・マキナ」「デトロイト・ビカム・ヒューマン」から経験して、どれも違った回答を持ってきてそのたびに苦しく悶えたなあ。
愛することはできるけれどけして結ばれないAIモノが大好きだし、それは創作的要求とマッチするAIの絶対的な他者性と、演出次第で本当の人間のようにもできる都合の良さとか、いろいろ知ってしまっても変わらなかった。(絵柄でどうにでもなるでいくと「男の娘」もソレだけど性癖の関係でNGだった。)

模擬国連最後に出た全国大会もAI会議だったなあ。AJMUN30th 英語会議 ”The Role of Artificial Intelligence in Advancing SDGs"
議題にも挙がってたような実際の汎用AIの問題は本作にも登場してた。

○スタンドアローンとされるのにその辺の高校生に判断の重み付け調整される。(理由は明かされるが)過学習しすぎ。
○ブラックボックス問題・閉世界仮説は意識されてて、命令とそぐわないとしても目的外の世界にはでない。「強いAI」なのに。
それ以外にもAIやアンドロイドがナチュラルに仕事を奪っていてその辺はデトロイトとも共通するところがあった。


■もっと広まれ!!!
こんなに大衆向けで誰も嫌いにさせない映画なのに、映画トレンドに上がってこないし、東京12館全国129館なのはすごく寂しい。
ネガ特典とかもなかったけど施策モリモリ盛り上げてほしいなあ、と。
題材が一貫しているけど、新海誠監督のように途轍もないヒットを生み出しうる監督であると信じてます。イヴの時間以来、毎度衝撃です。一生ついていきます。
Yoshitsune

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