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シカゴ7裁判のumisodachiのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.4


シカゴでベトナム戦争反対の抗議運動を行った7人の男たち。7人はそれぞれ別のグループに属していたが、デモが暴動と化した責任を問われ同時に裁判にかけられることになった。しかし、その裁判の内容は卑劣極まりない偏ったもので……。

実際にあった悪名高き裁判を基にしたNetflixオリジナル映画。名脚本家であるアーロン・ソーキンが監督を手がけ、出演者も超豪華。最後まで一瞬たりとも飽きさせないテンポ、ほどよく出現するエモーショナルな展開、役者陣の見事な演技合戦など見どころがありすぎて、終わった後に思わず「すごいな」と呟いてしまった。

恥ずかしながらこの裁判の存在は知らなかったのだが、まあビックリするほど酷い。法治国家とは思えない偏った判断、陪審員の買収、人種差別的かつ暴力的な措置など、やればやるだけ国民の心証悪くなるだろうになんで?という仕打ちが続く。判事役のフランク・ランジェラの芝居がムカついて最高なんだこれが。

被告人である7人(最初は8人)も別に仲間というわけではないので、考え方が全然違う。唯一彼らに共通しているのは「ベトナム戦争反対」ということのみ。それぞれに対する印象も違えば、デモについての姿勢も違えば、見えているものの大きさも違う。不当すぎる裁判が続く中で、彼らが意見をぶつけあうシーンが本当に面白い。

登場人物が多いので混乱したり散漫になったりしそうなものだが、脚本の妙なのかすべてのキャラクターが最初からちゃと立っている。そして、はじめのイメージをそれぞれがいろいろな方向で覆していくのだ。基本的にものすごいスピードでセリフが流れていくので、頭フル回転で鑑賞していかないといけない感じなのだが、要所要所でハッとするポイントが用意されている。

意外な人物が最も思慮深かったり、またその逆で冷静だと思っていた人物が実は感情的だったり。裁判所での駆け引きと、被告人同士の駆け引きが絶え間なく続いていくので最後までのめりこんで観てしまう。それぞれの立場、考え方、見えているもの、見えていないもの、口に出していることと胸に秘めていること。それらが非常に鮮やかに切り出されていく様子は魔法のよう。

そしてなんといっても素晴らしいのが、1969年の裁判を描いた話なのに極めて現代的なテーマになっていること。アメリカだけではなく日本も。国家は個人を罠に嵌めることができるし、事実を歪めることができるという絶望的な現実。この裁判の結果は数年後に覆された。今まさに毎日のようにテレビの中に映し出されている茶番はどうかな?お粗末な詭弁や論点ずらしが数年後でも覆されるようなことはあるのだろうか。










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