北海道に暮らす愛と宗介。愛の母親はシングルマザーだが、諸事情により宗介も愛と一緒に育てていた。しかし、病気だった愛の母親が倒れてしまい……。
リアリティラインが極めて曖昧な作品なので、私はあえてこれを「芸術映画」と呼びたいと思う。アニメーションと実写を混在させたり、ロングショットを多用した構図にこだわりまくったシーンがたくさんあったりと、演出面もかなりユニークなのだが、ストーリー展開自体がかなり個性的なのが印象的だ。
北海道で展開する前半はわかりやすくストーリーが進行していくのだが、ある事情によって愛だけが東京に行ってから一気に時空が歪む。リアリティラインが消失すると言ってしまってもいいくらいのはじけ方をするので、ここで振り落とされる人はけっこういるだろう。
後半に転じた時点で本作を寓話だと認識できればOKなのだと思うし、私は心地よかった。母親への想いや葛藤を乗り越えていくひとりの少女の心の動きと成長を、自由なビジュアルイメージで表現している感じがして。
いわゆる基本的な物語の構造として、主人公が出て行って、成長をして帰ってくるというものがあるが（不思議の国のアリスとか、オズの魔法使いとか）、本作もその構造にのっとっている。母親を失うという出来事をきっかけに出ていった主人公が、東京という外の世界で色々な人と出会い成長し、帰還するというシンプルな展開だということがわかるだろう。
反発しあいながらも互いに必要としていた愛と宗介の関係性の描き方も独特で、親と切り離されざるを得なかった子どもたちの拠り所のなさと、それを超えて共に歩き出したときの強さといったもののコントラストが印象的。テーマ上、決別や弔いを象徴する必要はあると思うので、あのラストにも納得できた。
決してわかりやすい映画ではないし、突き放しているように感じる部分も確かにあるのだが、本作のように脳内をそのまま具現化したような作品を形にできる能力というのは希少だと思う。もっとわかりにくくてもいいから、このまま突き進んでいってほしい。
