Nasagi

セブンのNasagiのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.4
「シャーロック・ホームズ・シリーズの真の生みの親はコナン・ドイルではない。ロンドンという都市そのものだ。」という話を聞いたことがあります。

つまり、ああいった犯罪小説が成立する上で、匿名性や隣人との関係性のうすさといった、大都市ならではの環境が前提にあって、コナン・ドイルはそれらに対する人々の不安や関心をうまく捉えて小説に落とし込んだのだと。

ホームズが活躍した時代からは一世紀ズレているものの、同じく世紀末の大都市を舞台にしたクライム・ミステリーである本作『セブン』についても似たようなことが言えると思います。

ただし、この世界にホームズのようなヒーローはいません。

強姦された時は「助けて」ではなく「火事だ」と叫ばなくてはならない。
血まみれの男が警察署に入ってきたのに、大声で叫ぶまでだれも気づかない。

そんな「無関心」が蔓延する現代社会を皮肉りつつも、その中でサマセット刑事は「なんとかやっていく」ことを決意します。

厭世的な態度がつよい彼ですが、犯人の「work」を目の当たりにしたり、トレーシーやデイビッドと話したりする中で、あきらかに彼の心境は変化していっています。

善悪をはかる基準を見失いながらも、ありがちな冷笑主義に陥ることなく、世界について問い続ける覚悟をきめた彼をみて、この映画にはちゃんとした思想と哲学が流れているなと思いました。
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